...三号の倉庫に狼が羊の檻の中に逐い込まれた様だった...
有島武郎 「かんかん虫」
...まるで狼みたいな...
江戸川乱歩 「押絵と旅する男」
...此(こ)の權幕(けんまく)に辟易(へきえき)して戸口(とぐち)の方(はう)に狼狽(まご/\)出(で)て行(ゆ)く...
アントン・チエホフ Anton Chekhov 瀬沼夏葉訳 「六號室」
...警視庁の狼狽は一通りでなく...
相馬愛蔵、相馬黒光 「一商人として」
...ひどく狼狽している...
太宰治 「ろまん燈籠」
...狼狽もしなければ未練も起さない...
豊島与志雄 「生活について」
...お豊が狼狽(あわ)てて着物をとりかかろうとしたから...
中里介山 「大菩薩峠」
...誰も狼に食われたものと信じて疑わない...
中里介山 「大菩薩峠」
...「それはそうとして、お雪ちゃん、鳩の方はとにかく、この名古屋行の分を貸して差上げましょう、この鳩は、尾張の名古屋までしか行かない鳩だということを、忘れてはいけませんよ」「それはただいま承りました」「しからば、その弁信さんというのは、ドコにおいでなさるのですか」「それは、わかりませんけれど……」「その居所のわからない人のたよりを、名古屋へしか行かない言伝(ことづて)に頼んだところで、無益じゃありませんか」「それでも、弁信さんは、しょっちゅう旅をしつづけている人ですから、もしかして、途中でこの鳩にでくわさないとも限りませんわ」「心細いような、大胆なようなおたよりですね、もしかしての範囲があんまり広いのに、鳩の行程が定まり過ぎています」「それでもかまいません、もしかして、わたしからの弁信さんへの手紙が、途中で、ほかの人に渡っても、その人が弁信さんへ届けて下さるかも知れませんもの」「かも知れないことを、たよりになさるなら、いっそ、この鳩が途中下車した時に、ちょうど旅をして休んでいた弁信さんとやらの頭の上へ止まるかも知れません、と言ったらいかがです」「そんなことも無いとはいえませんのよ」「いよいよたよりないことですね、ほとんど当てのない海中へ、石を投げ込んで鯛を取ろうというような目あてですね」「でも弁信さんは別物よ、あの人は、とても勘のいい人ですから、この鳩が、わたしからのたよりを持っていることを、頭の上を飛んで行く音で、ちゃんと聞きわけるかも知れませんのよ」「ははあ、超人間の働きですねえ、第一、頭の上で飛ぶ音を聞きわけるというのが振(ふる)っていますね――そのくらいなら、眼をあげて見分けてもらった方がいいじゃありませんか」「ところがね、弁信さんは眼が見えないんですよ、北原さん」「え」「あの人は、眼が見えない代りに、勘がおそろしくいいんですから、わたしのたよりを持った鳩と行逢えば、その羽の音で、きっとさとってしまいますわ」「驚きましたね、いかに勘が鋭敏だといって、それが本当なら、まさしく超人間です」北原が、やや茶化し気分のいい気持で相手になっていると、お雪ちゃんはいよいよ真剣になって、急に思いついたように、「あ、そうそう、そういう場合は、弁信さんよりも茂ちゃんだと一層いいわ、あの子ならこの鳩を呼び寄せてしまいます」「何ですってお雪ちゃん」「あの茂ちゃんて子が、もし弁信さんと一緒なら占(し)めたものよ」「茂ちゃんとは、何者です」「可愛ゆい子で、弁信さんと大のなかよしですが、もし二人が一緒にいてくれると、弁信さんがこの鳩を勘でかんづいて、茂ちゃんに耳うちをすると、茂ちゃんが口笛を吹いて、この鳩を呼びとめてしまいます」「なんだか、お雪ちゃんの話は、捜神記(そうじんき)を夢で見ているようで、我々には、いっこう取りとまりがないが……」「いいえ、茂ちゃんていう子は、それは不思議な子よ、どんな荒い獣でも、空を飛ぶ鳥でも、地に這(は)う虫でも、みんな呼び寄せて、なつけてお友達にしてしまうんです、そのくせ、人間に逢っては、ずいぶん臆病なんですけれども、人間のほかのものなら、何でも怖いということを知りませんね、自分が怖がらないから、先方で自然にお友達になって来るのです――うちにいる時も、狼を呼びよせて、しょっちゅうお友達にして、自分の寝る縁の下へ住まわせて、御飯を分けて食べさせていましたが、そのくせ、わたしたちにそれが見つかりゃしないかと、ビクビクしていましたわ...
中里介山 「大菩薩峠」
...仏頂寺が先手を打って死神を狼狽させてやるのだ――は...
中里介山 「大菩薩峠」
...茶の間には茶碗や盃が狼藉として居る...
長塚節 「十日間」
...狼(おほかみ)の遠吠見たいな聲を出させるんですもの」お組はチラリと鋒鋩(ほうばう)を出しました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「ああわるう御座ンした……」と文三は狼狽(あわ)てて謝罪(あやま)ッたが...
二葉亭四迷 「浮雲」
...(平四郎の声が聞えなかったらしい)かなり狼狽(ろうばい)ぎみに...
山本周五郎 「山彦乙女」
...そのかみの狼の咆吼をあげ...
ジャック・ロンドン Jack London 山本政喜訳 「荒野の呼び声」
...狼狽(ろうばい)の色が...
吉川英治 「黒田如水」
...そこは狼藉(ろうぜき)を極めていた...
吉川英治 「私本太平記」
...飢(う)えた狼のような者の前へ...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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