...狭斜(けふしや)の遊(いう)あるを疑はれしとて...
芥川龍之介 「雑筆」
...それがずつと狭斜らしい感じのする巷路へと入つて行つた...
田山録弥 「一室」
...ひとり立つてじつと海を眺めてゐる若い美しい女――それは一目で狭斜(けふしや)の人であるといふことがわかつたが...
田山録弥 「犬」
...あゝいふことは出来ませんな!』しかしその音はいかにも水郷の狭斜らしい感じをかれに誘つた...
田山録弥 「船路」
...彼れは夙くから一廉の狭斜通であつたらしく想像されるが...
坪内逍遙 「斎藤緑雨と内田不知菴」
...興動けば直(ただち)に車を狭斜(きょうしゃ)の地に駆(か)るけれど家には唯蘭(らん)と鶯(うぐいす)と書巻とを置くばかり...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...是ヲ狭斜ノ叢トナス...
永井荷風 「上野」
...寺島町五丁目から六七丁目にわたった狭斜の地は...
永井荷風 「※[#「さんずい+(壥−土へん−厂)」、第3水準1-87-25]東綺譚」
...狭斜の巷に意気と張りとで生きて行く女性(婦系図のお蔦等・通夜物語の丁山・その他)純情の少女(婦系図のお妙・三枚続のお夏以下)勇み肌の兄哥(三枚続の愛吉)等のつくり出す情調と――この二つが...
中島敦 「鏡花氏の文章」
...みなその粉本(ふんぽん)はこの狭斜(きょうしゃ)のちまたから得ている...
長谷川時雨 「明治大正美女追憶」
...いまゝたはじめて清福の作家生活結婚生活に入るを得た巣鴨の狭斜街の旧宅趾も亦過去一切を偲ぶ可くもなくなつてしまつた...
正岡容 「巣鴨菊」
...かえってこうした狭斜の世界の物語だけに聞き苦しくはなかった...
正岡容 「寄席」
...原稿料を取るとすぐ狭斜街へ...
正岡容 「わが寄席青春録」
...周覧は狭斜に出入し...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...しみじみと水を凝視むるうつくしき黒瞳にも寂しさの浮くかなしみの世界より来し人のごと会へばよく泣く君なりしかな頬を濡らし袂を濡らしわが膝を濡らす涙は秋雨に似るたはむれに涙の文と名づけたる君がかなしき狭斜消息かにかくにわれら酔へるが如くゐぬさいはひに酔ひ悲みに酔ひ解脱処女作「笛」を出品したその翌年の秋の展覧会には...
吉井勇 「酔狂録」
...狭斜の情調に少年の未知が衝かれる...
吉川英治 「年譜」
...関内芸妓の狭斜の町と織り交ざっており...
吉川英治 「忘れ残りの記」
...すなわち音調の美と狭斜(きょうしゃ)の情調とを中心にする歌から...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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