...さっきまでは、目の下に黒く死人(しびと)のにおいを蔵していた京の町も、わずかの間(ま)に、つめたい光の鍍金(めっき)をかけられて、今では、越(こし)の国の人が見るという蜃気楼(かいやぐら)のように、塔の九輪や伽藍(がらん)の屋根を、おぼつかなく光らせながら、ほのかな明るみと影との中に、あらゆる物象を、ぼんやりとつつんでいる...
芥川龍之介 「偸盗」
...面は物象の量と積とを表わすためにのみ用いられた...
有島武郎 「惜みなく愛は奪う」
...それが今日世界にある種々の物象に化生したというのである...
スワンテ・アウグスト・アーレニウス Svante August Arrhenius 寺田寅彦訳 「宇宙の始まり」
...彼は自然界の諸々(もろもろ)の物象に比して...
内村鑑三 「ヨブ記講演」
...動いた芸術と言ふことは、動いた物象、動いた人物、動いた心理――さういふものをそのまゝに現はさうとする芸術である...
田山録弥 「動的芸術」
...――形態の知れぬ物象が入り乱れた中から...
豊島与志雄 「都会の幽気」
...この時「自然詩人」は感興の対象なる事象物象をセンチメンタルに...
中原中也 「河上に呈する詩論」
...それらの物象に接する時...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...物象の何年生だったかの教師用に...
中谷宇吉郎 「簪を挿した蛇」
...併(しか)しスクリーンの世界と違うところは物象に立体感と...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...自分は物象と接觸せんとして反撥される...
萩原朔太郎 「散文詩・詩的散文」
...一種の神經的に光つた物象が...
萩原朔太郎 「散文詩・詩的散文」
...執念く彼の眼の前の物象(もの)を曇らせてしまつた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...我々のすぐ周囲のあらゆる地上の物象だけでなく...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「アッシャー家の崩壊」
...写つた物象は悉く歪んでゐるのだ...
牧野信一 「鏡地獄」
...で其處らの物象が...
三島霜川 「解剖室」
...それは丁度消え失せた太陽の反射のやうに物象の上へたゆたつてゐた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...踊りを自然の物象に服従せしめるということにはならない...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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