...必要もないほど高価だと思われる厚い書牋紙(しょせんし)に大きな字で書きつづってある木村の手紙を一枚一枚読み進んだ...
有島武郎 「或る女」
...わたしはその雅号を彩牋堂(さいせんどう)主人と称(とな)えている知人の愛妾(あいしょう)お半(はん)という女がまた本(もと)の芸者(げいしゃ)になるという事を知ったのは...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...実は小生去冬(きょとう)風労(ふうろう)に悩みそれより滅切(めっき)り年を取り万事甚(はなはだ)懶(ものう)く去年彩牋堂竣成(しゅんせい)祝宴の折御話有之候薗八節(そのはちぶし)新曲の文章も今以てそのまゝ筆つくること能(あた)はず折角の御厚意無に致(いたし)候不才の罪御詫(おわび)の致方(いたしかた)も無御座(ござなく)候...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...しかしその後は薗八節再興の御手筈(おてはず)だん/\と御運びの事と推察仕(つかまつり)をり候処実は今夕偶然銀座通にてお半様に出遇(であ)ひ彩牋堂より御暇(おいとま)になり候由承り...
永井荷風 「雨瀟瀟」
......
永井荷風 「雨瀟瀟」
...依(よっ)てかの家を彩牋堂とこじつけ候へども元より文藻(ぶんそう)に乏しき拙者(せっしゃ)の出鱈目(でたらめ)何か好(よ)き名も御座候はゞ御示教願はしく万々(ばんばん)面叙(めんじょ)を期し申候ヨウさんは金持であるが成金ではない...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...わたしがヨウさんに勧められ「彩牋堂の記」を草する心になったのも平素『鶉衣』の名文を慕うのあまりに出(い)でたものである...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...秋涼を待ち彩牋堂の稽古が始まる頃にもなったら机に向おうと思っていると...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...二月に至って彩牋堂から稽古始めの勧誘状が来たが毎年わたしは余寒のきびしい一月から三月も春分の頃までは風のない暖かな午後の散歩を除いてはなるべく家を出ぬことにしているので筆硯(ひっけん)多忙と称して小袖(こそで)の一枚になる時節を待った...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...彩牋堂へはそのまま忘れたように手紙の返事さえも出さず一夏を過して...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...わたしは突然銀座通りで小半の彩牋堂を去った由を知るやおのれが無沙汰(ぶさた)は打忘れただ事の次第を訝(いぶか)ったのであった...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...煙草(たばこ)の煙の籠(こも)り過ぎたのに心づいてわたしは手を伸ばして瓦塔口(かとうぐち)の襖(ふすま)を明けかけた時彩牋堂へ宛(あ)てた手紙を出しに行った女中がその帰りがけ耳門(くぐり)の箱にはいっている郵便物を一掴(ひとつか)みにして持って来た...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...その外(ほか)に書状が二通あった中の一通は書体で直様(すぐさま)彩牋堂主人と知られた...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...さて突然ながらかのお半事このほどいささか気に入らぬ仕儀有之(これあり)彩牋堂より元の古巣へ引取らせ申候...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...折角の彩牋堂今は主なく去年尊邸より頂戴(ちょうだい)致候秋海棠(しゅうかいどう)坂地にて水はけよきため本年は威勢よく西瓜(すいか)の色に咲乱れをり候折から実の処銭(ぜに)三百落したよりは今少し惜しいやうな心持一貫三百位と思召被下(おぼしめしくださる)べく候...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...足の向くまま彩牋堂の門前に来て見ると檜(ひのき)の自然木を打込んだ門の柱には□□寓(ぐう)とした表札まだそのままに新しく節板(ふしいた)の合せ目に胡麻竹(ごまだけ)打ち並べた潜門(くぐりもん)の戸は妾宅(しょうたく)の常とていつものように外から内の見えぬようにぴったり閉められてあった...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...(遵生八牋七)紀州西牟婁郡諸村には大工が主人を怨み新築の家を呪して白蟻を招き害を加ふる術ある樣にきく...
南方熊楠 「人柱の話」
...芳魂忽入芸牋裏...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
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