...小使の老爺(おやぢ)に煮炊(にたき)をさして校長の田邊が常宿直をしてゐた...
石川啄木 「葉書」
...中には一家族が煮炊の煩累を避けてこの常平弁当を喰べる者もあるとさえ聞いた...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...煮炊(にたき)は無論できません...
夏目漱石 「行人」
...大名は滅多に他所(よそ)で煮炊(にた)きした物を食べません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...しかし病人の好む場合には特に内で煮炊きする必要が起る事もある...
正岡子規 「病牀六尺」
...煮炊をしたりいたします...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...誰が煮炊(にたき)をするのだね...
ハンス・ランド Hans Land 森鴎外訳 「冬の王」
...または屋外で煮炊(にた)き食事をする風があるか...
柳田国男 「年中行事覚書」
...彼女だけは(乏しいながら)煮炊きを欠かさなかった...
山本周五郎 「雨あがる」
...「こんな暮しは御免だ、飽き飽きした、……おふくろはいつもそう云ってた、満足に食いてえ物も食えねえ、着てえ物も着られねえ、おまえさんなんかと一緒になるンじゃアなかった、……こいつを口癖のように云った、いつも頭が痛え、腰が痛え、眩暈(めまい)がする腹がやめる、疲れて起きられねえから、おまえさん起きて釜の下を焚きつけて呉れ、……そして、そのくせ夜中になれば、父をそっと寝かしたこたアねえ、むりむてえかかってくんだ、否も応もねえ、むりむてえ、文句なしなんだ、……たまには父もいやだでとおすことがあった、誰にだって、どんなに強くったって、そこは男は女たア違う、どういきんでもいきみきれねえ時があらア、……知れたこッたが無事にゃアおさまらねえ、おれの口じゃア云えねえような悪態だ、帝釈(たいしゃく)様も耳を押えたくなるような悪態の始まりだ」「女はつまらねえもんだ、まるで下女下男みてえだ、……これがおふくろのもう一つの口癖だった」彼はひと口飲んで続けた、「男は外で勝手な事をする、ちっとばかりの稼ぎで酒も飲む、隠れて悪遊びもするが、女は家にひっこんでぼろの縫い繕い、煮炊き洗濯、子供の世話から暮しの心配から、いやな事はみんな女の役だ、下女下男なら給銀てえものがあるが、女房にゃアそれもねえ、働きどおし働いて、これッぽちも楽しい思いをしねえで、亭主にこき使われ、牛馬のように一生を終ッちまう、これが女の一生だ、……ああ、……だがおらあ知ってるんだ、おらあ、……この眼で見て、この耳で聞いて知ッてるんだ、おふくろは父が稼ぎに出るとのこのこ起きだして来る、父の炊いてった飯を食う、それから近所の嬶たちを呼ぶか、こっちから押掛けるかして、十文が菓子を買ってがぶがぶ茶を飲みながら、……緞帳(どんちょう)芝居の役者評判か色噺(ばなし)か、近所合壁(がっぺき)の悪口が始まる、……恥も外聞もねえような、男も顔が赤くなるような下劣なことを饒舌って、げらげら笑って、しめえにゃアてんでんが、てめえの亭主を裸にするようなことをぬかしゃアがる、……嘘アつかねえ、おらあこの眼で見た、この耳で聞いた、おらあちゃんと知ってるんだ」「父はいい人間だった」ひと息いれて松は話し継いだ、「――おふくろになんと云われても、決して口答えはしなかった、……済まねえ、おれに甲斐性(かいしょう)がなくッて申し訳がねえ、もうちっとだから辛抱して呉んねえ、……だが旦那、父だって人間だ、一寸じゃねえかもしれねえ、五分ぐれえかもしれねえが、五分の虫にだって二分五厘の魂はあらア、たまにゃあむしゃくしゃして肚(はら)も立つだろう、やけくそなような気持にだってなるこたアあらア、……稼いでも稼いでも、正直一方でこすい事が出来ねえ、いつも下積みでうだつがあがらねえ、女ア知らねえから外で勝手なまねをしていると思ってる...
山本周五郎 「嘘アつかねえ」
...不平らしい顔もせず煮炊き洗濯をする父のようすや...
山本周五郎 「追いついた夢」
...煮炊きの煙もおさまった長屋の家々では...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...長屋のそこ此処(ここ)で煮炊きをする匂いや...
山本周五郎 「末っ子」
...煮炊きにも、飲料にも、藩主にはその井戸の水だけしか使わなかった...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...これからは自分で煮炊きをしなければならない...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...夜だけなら煮炊きだって洗濯だって出来るし...
山本周五郎 「ゆうれい貸屋」
...彼等回回教徒(マホメダン)の習慣として他(た)人種の煮炊(にたき)した物は食はない...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
...俺と一緒では何彼と損がゆくところからあゝして自分自身で煮炊をしてたべてゐる事などを...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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