...椹野川に沿うて一筋に下つてゆく、潮水に泡がういて流れる、秋の泡とでもいはうか、堤防には月草、撫子が咲き残つてゐる、野菊(嫁菜ではない)がそここゝに咲いてゐる、砂ほこりが足にざら/\して何だか物淋しい、やたらに歩いて入川の石橋に出た、海は見えないけれど、今日は立干をやつてるさうで、鰡が上つてくる、それを網打つべく二三人の漁夫が橋の上で待つてゐる、見物人が多い、私の(マヽ)その一人となつて暫らく見物した、そして労れたので、そこからひきかへした、名田島の中央を横ぎつて、駅の南方をまはつて帰庵したのは夕方だつた、それから水を貰ふやら、粥を煮るやら、お菜をこしらへるやらするうちに、すつかり暮れてしまつた...
種田山頭火 「其中日記」
...・誰も来ない蕗の佃煮を煮る・蕗つめば蕗のにほひのなつかしく・蕗の香のしみ/″\指を染めた・初夏の...
種田山頭火 「其中日記」
...私はおいてきぼりになつた気もちでいつまでもとつておくといつてきかないのを母と伯母とでさつさともぎとつて鍋で煮る...
中勘助 「銀の匙」
...夜執筆の傍火鉢にて林檎を煮る...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...馬鈴薯と南瓜を煮る...
永井隆 「長崎の鐘」
...湯でくつくつと煮る...
中谷宇吉郎 「貝鍋の歌」
...饂飩(うどん)を煮る湯気が障子の破れから...
夏目漱石 「二百十日」
...「なんですか?」「飯を煮る用意をして行け」ほかの人夫も立ちあがった...
本庄陸男 「石狩川」
...そんなお客が来るんなら私達は逃げ出さう――家の中で牛肉を煮ることすら決して許さない彼の祖母は仏壇に錠を下して...
牧野信一 「或る五月の朝の話」
...全体を通じて言へば句法において蕪村の「酒を煮る」「絵団扇」の如きしまりなく...
正岡子規 「俳人蕪村」
...ブツブツと胴切りにして羹(しる)に煮るを何やら分らずに吃(く)う...
南方熊楠 「十二支考」
...二特別な家を除くの外(ほか)大概は牛のブリスケとかイチボとかいうような肉一斤(きん)へ一升位な水を入れて二時間も煮ると肉を出してしまいます...
村井弦斎 「食道楽」
...あだかも料理法で物を煮るように強過ぎる火で行かず弱過ぎる火でならず丁度(ちょうど)よいという程(ほど)と加減(かげん)を知るのがむずかしい...
村井弦斎 「食道楽」
...一旦湯煮て薩摩汁の如く種々の野菜と共に煮るがよし...
村井弦斎 「食道楽」
...その時段々火を強くして暫(しば)らく煮ると林檎が柔(やわらか)になって...
村井弦斎 「食道楽」
...章魚を煮るとき小豆(あずき)を交ぜると聞きましたがあれはどうです」お登和「小豆を交ぜて煮ますと柔くなるよりも溶けるので...
村井弦斎 「食道楽」
...○蚕豆を煮る時昆布と共に煮れば双方共に柔くなりて味よし...
村井弦斎 「食道楽」
...ネルラが水で煮るとそれよりも旨い...
カミイユ・ルモンニエエ Camille Lemonnier 森林太郎訳 「聖ニコラウスの夜」
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