...その煤臭(すゝくさ)い明(あか)りで眺めますと...
芥川龍之介 「地獄變」
...それであるのに、不思議に、煤けた天井板が、ずんと脳天へひゞき、圧せられるやうな懶い一種廃頽的な感じが身をとりまいた...
飯田蛇笏 「薄暮の貌」
...あの折角の印度更紗(インドさらさ)の窓かけも最早や昔日(せきじつ)の俤(おもかげ)を止(とど)めず煤(すす)けてしまい...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...・ふるさとちかい空から煤ふる(再録)□この土(ツチ)のすゞしい風にうつりきて(小郡)小郡へ着いたのが七時前...
種田山頭火 「行乞記」
...逢へるよろこびをいそぐ・煤煙...
種田山頭火 「其中日記」
...石炭や煤の粉交じりだから特別な不快な色をしている...
寺田寅彦 「歳時記新註」
...烟筒(えんとう)空を衝いて煤烟(ばいえん)天を漲(みなぎ)らすの製造者あり...
徳富蘇峰 「将来の日本」
...蛇は時とすると煤けた屋根裏に白い体を現わして鼠を狙って居ることがある...
長塚節 「太十と其犬」
...これは背の低い眼の凹(くぼ)んだ煤色(すすいろ)の男である...
夏目漱石 「倫敦塔」
...皮膚の黒さは煤で塗られたようである...
野上豊一郎 「七重文化の都市」
...半日煤拂(すゝはら)ひほどの騷ぎをして...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...田舍者の煤ぼけた樣子をして居る...
萩原朔太郎 「悲しい新宿」
...都会の空をとほく悲しくながれてゆく煤煙...
萩原朔太郎 「月に吠える」
...煤だらけのむき出しの梁(はり)から...
久生十蘭 「キャラコさん」
...濛々たる煤煙(ばいえん)...
火野葦平 「花と龍」
...長押には煤のかゝつた黒い槍が懸つてゐた...
牧野信一 「或る五月の朝の話」
...眉を煤(すす)けさして置くのは本心ではなかった...
室生犀星 「荻吹く歌」
...「六日午後実母公得卒中風、昏睡不醒、吐濁唾煤色...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
便利!手書き漢字入力検索