...彼は云つて木賃宿の裏手の狭い道を――そこから薄暗い部屋に親子夫婦たちがくるまるやうにして寝てゐるのが煤(すす)けた格子窓越しにのぞかれ...
武田麟太郎 「釜ヶ崎」
...汚れ煤けたガラスに吸い付いたように細長いからだを弓形(ゆみなり)に曲げたまま身じろきもせぬ...
寺田寅彦 「やもり物語」
...黒い煤(すす)のようなものを吐くようになった...
徳田秋声 「仮装人物」
...その傍(そば)の煤(すす)けた柱に貼(は)った荒神様(こうじんさま)のお札(ふだ)なぞ...
永井荷風 「妾宅」
...煤(すす)けた往来に冴々(さえざえ)しい一点を認めた気分になって女の頸(くび)の辺(あたり)を注意した...
夏目漱石 「彼岸過迄」
......
野口雨情 「未刊童謡」
...夜半まで煤掃(すゝは)きのやうな騷ぎでした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...煤掃(すゝは)きなら暮に濟んだのに」ニヤリとするお安...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...煤(すゝ)けたり...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...直方の町は明けても暮れても煤(すす)けて暗い空であった...
林芙美子 「新版 放浪記」
...綺麗かぞ」煤(すす)けた低い障子(しょうじ)を開けて...
林芙美子 「風琴と魚の町」
...見て来た滕県城の煤色(ビチューム)の重々しい城壁のすがたがありありと瞼の裏に浮んで来た...
久生十蘭 「生霊」
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前田普羅 「普羅句集」
...碧い色をして居た空にいつの間にかモヤモヤした煤の様な雲が一杯になってしまって居る...
宮本百合子 「草の根元」
...煤(すす)けた几帳(きちょう)を引き寄せてすわっていた...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...煤色(すすいろ)によごれた戸棚から...
森鴎外 「あそび」
...煤(すす)だらけな浪宅に竹脚の膳をすえ...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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