...兄は煤竹(すすだけ)の柄(え)のついた置きランプを一台さげた儘...
芥川龍之介 「雛」
...眞黒に煤けた屋根裏が見える...
石川啄木 「鳥影」
...省作は庭場の上がり口へ回ってみると煤(すす)けて赤くなった障子へ火影が映って油紙を透かしたように赤濁りに明るい...
伊藤左千夫 「隣の嫁」
...煤色(すすいろ)と紺の細かい弁慶縞(べんけいじま)で...
伊藤左千夫 「野菊の墓」
...二本三銭の梅が咲きはじめた・明日はお正月の数の子まで貰つた・ぐるりとまはつてまたひとりになる霜枯れの菊の枯れざま・霜の大地へコマぶつつける洟垂息子の独馬(マヽ)は強いな降つてきたのは煤だつた畠の葉ぼたんのよう売れてさみしくなる夕ざれは豆腐屋の笛もなつかしく十二月卅一日曇つて寒い...
種田山頭火 「行乞記」
...われわれの心の鼻はかびや煤(すす)の臭気にむせる...
寺田寅彦 「俳句の精神」
...針は煤(すす)硝子の上に現物とほとんど変らぬものを描き出すのである...
寺田寅彦 「話の種」
...どこへ行くのかをも知らずに……煤けた板壁に...
富永太郎 「鳥獣剥製所」
...煤まみれの低い天井...
直木三十五 「南国太平記」
...彼(かれ)は一年(ねん)ぶりに殷(さか)んな都(みやこ)の炎熱(えんねつ)と煤煙(ばいえん)を呼吸(こきふ)するのを却(かへ)つて嬉(うれ)しく感(かん)じた...
夏目漱石 「門」
...煤(すす)の上に朱を流したようだ...
夏目漱石 「倫敦塔」
...菊治――井戸替へと煤掃(すゝはき)が一ぺんに始まつたやうな騷ぎだ」「で...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...祖先の煤黒い位牌を飾つた...
萩原朔太郎 「宿命」
...煤けた駅のベンチで考えた事は...
林芙美子 「新版 放浪記」
...煤ぼけた神棚にお光(あか)りがあがつてゐるのも妙だと思つたけれども...
林芙美子 「下町」
...それに下賤な職人どもめがやたらにてんでの仕事場から煤や煙を吐き出させくさるので...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「狂人日記」
...彼の薄い皺のやうな感じが漂うてゐる煤色の顔や...
牧野信一 「泉岳寺附近」
...そうぞうしい人人の埃と煤と雑音とによごれて...
室生犀星 「幻影の都市」
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