...古帽子だか手拭だか煤けですつぱりと頭を包んだから目鼻も分らず...
泉鏡花 「遺稿」
...煤(すす)けた姑獲鳥(うぶめ)のありさまで...
泉鏡花 「開扉一妖帖」
...台所でも座敷でも天井が高く長押(なげし)は大きくいずれも時代の煤(すす)を帯びて十畳ぐらいの広さはありそうに思われました...
橘外男 「棚田裁判長の怪死」
...東京中の煤掃(すすは)きの塵箱(ごみばこ)を此処へ打ち明けた様なあらゆる襤褸(ぼろ)やガラクタをずらりと並べて...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...どこへ行くのかをも知らずに……煤けた板壁に...
富永太郎 「鳥獣剥製所」
...木目も分らないほど煤けた天井板が...
豊島与志雄 「神棚」
...煤(すゝ)けた藥罐(やくわん)を五徳(とく)へ掛(かけ)てそれから彼(かれ)は草鞋(わらぢ)をとつた...
長塚節 「土」
...煤(すす)けた障子がさらりと開(あ)く...
夏目漱石 「草枕」
...それでこの間までは好奇心に駆られて「煤烟」を読んでいたが...
夏目漱石 「それから」
...むろんあの邊一帶に、葭芦しげる入江であつたのだといふし、下總も、眞間の入江と歌にも殘つてゐる通り、鴻の臺下まで海であつたのだから、その點、蓮田に潮の逆入は古い/\昔にかへつた――ともいへるが、青い/\海原が、青い/\水田になり、また青い/\波が打寄せるやうになるのではなく、こんどは、青いものなんか何ひとつない、眞黒い煤煙と、コンクリートになつて、以前は青いものを自然が示したが、後には青いのはそこに住む人間の顏といふことにならう...
長谷川時雨 「河風」
...軒の出っぱった煤けた街が見えている...
林芙美子 「新版 放浪記」
...これが巴里」あきれたような顔で煤ぼけた駅前の広場を見まわしていると...
久生十蘭 「ユモレスク」
...天井の煤(すす)との混合した赤黒い汁がたれる...
火野葦平 「花と龍」
...さぞ立派な紳士追剥(おひはぎ)におなりだつたでせうに!」「煤(すゝ)はもうすつかり...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...煤(すす)ぼけた家の頭が点々としていた...
本庄陸男 「石狩川」
...定まって赤煉瓦の煤けたもので...
前田河広一郎 「ニュー・ヨーク 『青春の自画像』より」
...その間に黒い枯木が散らばる、廃墟のような大建築が隠見する、煤煙が流れ、雲が渡り、鳶が舞い、飛行機が横切る...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...どの御(お)寺も其(その)外観の荒廃し掛けて黒く煤(すゝ)びて居るのを仰いで過ぎる方が通りすがりの旅客(りよかく)の心に趣(おもむき)が深い様に思はれた...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
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