...黄金火の漲る都会を眼がけて走り寄るのは当然である...
石川三四郎 「吾等の使命」
...一方にはきわめて消極的な涙もろい意気地(いくじ)ない絶望が漲るとともに...
田山花袋 「一兵卒」
...白い埃がぱつとあたりに漲るやうに(あが)つた...
田山録弥 「草みち」
...本能の洪水が漲るやうに押寄せて来てゐる...
田山録弥 「心の絵」
...そのもくもくと漲るやうにわき出してゐる清水を眺めた...
田山花袋 「道綱の母」
...それと同時に窕子の頭にはいろいろなことが一杯に漲るやうにあつまつて押寄せて來た...
田山花袋 「道綱の母」
...大都市の冬に特有な薄い夜霧のどん底に溢れ漲る五彩の照明の交錯の中をただ夢のような心持で走っていると...
寺田寅彦 「初冬の日記から」
...雲のまだ收まるか收まらぬに鹿股川は濁流が漲るのである...
長塚節 「痍のあと」
...利根川や漲る水に打ち浸る楊吹きしなふ秋の風かもおぼほしく水泡吹きよする秋風に岸の眞菰に浪越えむとす同廿三日...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...漲る瘡蓋(かさぶた)模様のやうに...
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー Jean Nicolas Arthur Rimbaud 中原中也訳 「ランボオ詩集」
...何となく真珠色の光の漲るこの席上には不似合な風体(ふうてい)ですが...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...驚愕(きょうがく)の色が漲るのだった...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...全體に漲る若々しい詠嘆的なところがわれながら懷しいので...
水上瀧太郎 「貝殼追放」
...斯うした種々の気持は皆一まとめになって物音もしない熱気の漲る病人の小部屋にながれて行くのであった...
宮本百合子 「黒馬車」
...この評伝の美しさ、漲る誠意と、その土台をなして実に活々と確かに歴史の現実の諸関係をつかみ出している科学者としての方法は、ミケルアンジェロの芸術の本質をはっきりと描き出しているのみならず、当時の複雑きわまる社会と芸術との活きた画が立体的に動的にくりひろげられてゆくその道すじに、人々の心におどろくような新鮮な実感をもって、今日の世の中や芸術のありように対する新たな目ざめを覚えさせて行く...
宮本百合子 「現代の心をこめて」
...光漲るなかに何と大きい精神の慰安が在ることでしょう...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...苦しいまでに漲る気魄にわななきながら...
三好達治 「測量船」
...あたりに漲る強い白光に眉のあたりが痛んで来た...
横光利一 「旅愁」
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