...葉子は涙に解けて漂うような目を恨めしげに大きく開いて黙って倉地を見返した...
有島武郎 「或る女」
...黄橙(おうとう)の心(しん)をなして浮き出し左眼(さがん)の左角(ひだりかど)から漂うて右に到って消え失せた...
魯迅 井上紅梅訳 「幸福な家庭」
...エーテル波の漂う空間の声! 僕はそれを聞いていることにどんなに胸を躍らして喜んだことでしょう...
海野十三 「壊れたバリコン」
...木の葉のように漂うているとき...
寺島柾史 「怪奇人造島」
...部屋には夕気(ゆうけ)づいたような幽暗(ほのぐら)い影が漂うていた...
徳田秋声 「新世帯」
...線香の香も漂うていたことであろう...
外村繁 「澪標」
...真紅(しんく)の血痕が淋漓(りんり)として漂うのを示しました...
中里介山 「大菩薩峠」
...思えば、あの大菩薩峠の上の出来事以来、自分の身世(しんせい)も、あちらに流れ、こちらに漂うて、幾時幾所でいろいろの月をながめたが、この世に自分ほど不運なものは無いとは言わないが、自分というものもまた、あまり幸福にばかり迎えられた身とは思えない...
中里介山 「大菩薩峠」
...頭の奥に漂う画(え)のようにながめた...
夏目漱石 「手紙」
...水の上を一日ぢゆう漂うてゐた布袋草(イロンイロン)も靜かに何處かの水邊で...
林芙美子 「ボルネオ ダイヤ」
...漂うようにはるか視野の外に消え...
久生十蘭 「南極記」
...漂う香水の匂いが若い国王の血管に浸透し...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「道化玉座」
...それを寂しむような表情が漂うていた...
室生犀星 「後の日の童子」
...いかにも悦び勇んで山行する若人の氣分が漂うてゐるのを感ずる...
吉江喬松 「山岳美觀」
...何か大きな不可抗力の中に漂う彼らの生命を個々に追いながら...
吉川英治 「随筆 新平家」
...そしてこの溝(どぶ)どろの空気の漂う町が...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...あるいは悪夢のような標本から漂う微かなしかし強まりつつある臭いからか...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
...そうして樹々の間に漂うている生々の気は...
和辻哲郎 「樹の根」
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