...一度も充ちて溢れる思をさせて呉れなかつた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...溢れる気使ひは決して無いです...
石井研堂 「元日の釣」
...涙が留度もなく溢れる...
石川啄木 「二筋の血」
...涙が溢れるように流れた...
伊藤野枝 「わがまま」
...・濡れてすゞしくはだしで歩く・けふも旅のどこやらで虫がなくひとり住んで蔦を這はせる身に触れて萩のこぼるゝよ朝湯はうれしかつた、早く起きて熱い中へ飛び込む、ざあつと溢れる、こん/\と流れてくる、生きてゐることの楽しさ、旅のありがたさを感じる、私のよろこびは湯といつしよにこぼれるのである...
種田山頭火 「行乞記」
...天に支へるやうな巨大な體に溢れるほどの感情を表はしながら何といふ強い沈默であらう...
近松秋江 「湖光島影」
...砂が溢れると、あとに残るのがこのピカピカする物...
中里介山 「大菩薩峠」
...彼等の身体に溢れるその力をもてあつかいかねていた...
中島敦 「プウルの傍で」
...無数に溢れる無機的現象を見る...
中原中也 「地上組織」
...海水から金が採れるといふが地球全表面その三分の二の海から幾噸の金がにぎれるか濡れ手に千金 それを湯水のやうに浪費せばたのしからん水のやうに金をつかふ いや 躯いつぱい水を流せば水はぜいたくな幻想となりおれのてつぺんにぜにの音がはじけ散るよありあまり溢れる量のやはらかく水道の口金はじけ怒るごとく水の放出になにか溜飲のさがるやうす水の鋼鉄にうなじを敲かし恣(ほしいまゝ)なるしばしのとき……...
仲村渠 「水浴び」
...思わず涙が溢れる事がある...
林芙美子 「新版 放浪記」
...なみなみと満ち溢れる明るいものが頻りに感じられるのだつた...
原民喜 「永遠のみどり」
...それから溢れるばかりの貞潔な浄福とがあるのです...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...一夜恍惚たる蒼い蒼い光りに溢れる月に向って...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...溢れる詩のなかにひたれるのはうれしいことです...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...そしてもし胸に係恋(あこがれ)が溢れると...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...満ち溢れる幸福感の中に一種の不安...
山本周五郎 「青べか物語」
...何となく元気の溢れるやうな」書のはうが...
吉野秀雄 「秋艸道人の書について」
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