...十七 蝶藻の匂の満ちた風の中に蝶が一羽ひらめいてゐた...
芥川龍之介 「或阿呆の一生」
...気の狂う程の恐怖が自分の脳髄の中に満ちた...
アルチバシェッフ M. Artzibaschew 森鴎外訳 「罪人」
...大温にして小毒あり、というにつけても、普通、私どもの目に触れる事がないけれども、ここに担いだのは五尺に余った、重量、二十貫に満ちた、逞(たくま)しい人間ほどはあろう...
泉鏡花 「貝の穴に河童の居る事」
...感激に満ちた若い女性の声が聞えて来た...
海野十三 「空襲葬送曲」
...きっぱり打ち明けて呉れるSさんの痩躯(そうく)に満ちた決意のほどを...
太宰治 「懶惰の歌留多」
...僧は皆集まってきてその数が既に満ちた...
田中貢太郎 「緑衣人伝」
...この謎に満ちた手紙を読み終わって顔を上げると...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 三上於菟吉訳 「グローリア・スコット号」
...彼女の思い出に満ちたその土地のまん中の...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...愛に満ちた半ば沈黙の時期――「なぜともなく歓(よろこ)ばしい楽しい静安」――のあとに...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...そして凶なる陰影に満ちた周囲のうちに...
豊島与志雄 「生あらば」
...テルモピレの物語の奥に見らるるあの偉大なる炎に満ちた目をもって...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...それで腹が満ちたりと喜んでいる...
中里介山 「大菩薩峠」
...慈愛に満ちた眼差でベルナアルさんの顔を見おろしている...
久生十蘭 「葡萄蔓の束」
...一向効めもなく彼女は憂ひに満ちた眼で凝つと小鐘の名刺を視詰めるばかりであつた...
牧野信一 「奇友往来」
...果して作者は葉子の苦痛に満ちた激情的転々の根源を突いて...
宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
...こうした低級な享楽的要求に満ち満ちた浅草界隈に...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...若い健気(けなげ)な創造の力に満ちた桃の花...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集」
...キーツの胸には悪に満ちたる現世に対して激烈なる憎悪の念が起こる...
和辻哲郎 「霊的本能主義」
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