...呼気(いき)の湿気(しめり)で真白に凍つた...
石川啄木 「菊池君」
...年(ねん)じゅうぬかるみの絶えないような低湿(ていしつ)な小路である...
伊藤左千夫 「落穂」
...時間も、火も、湿気も、空気も、此の勝れた金属に害を加へる事は出来ないのだ...
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」
...三十×年八月八日 室内温度、湿度、照明度すべて異状なし 配給も正確なり本日は、地下千メートルを征服し、現在われわれの棲(す)んでいるこの極楽(ごくらく)地下街建設の満三ヶ年の記念日であるので、ラジオは朝から、じゃんじゃんと楽しい音楽を送ってくる...
海野十三 「今昔ばなし抱合兵団」
...水は冷で湿、地は冷で乾...
ジェイムズ・サンヅ・エリオット James Sands Elliott 水上茂樹訳 「ギリシャおよびローマ医学の概観」
...湿っぽい暮しの立て方をしている者もあれば...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...根津を抜けて帰るつもりであったが頻繁に襲って来る余震で煉瓦壁の頽(くず)れかかったのがあらたに倒れたりするのを見て低湿地の街路は危険だと思ったから谷中三崎町(やなかみさきちょう)から団子坂へ向かった...
寺田寅彦 「震災日記より」
...これに出て来るライオネル・バリモアーの役が湿疹(しっしん)に悩まされていることになっていてむやみにからだじゅうをかきむしる...
寺田寅彦 「破片」
...空気の湿度の高い日本では聊か無理だ...
豊島与志雄 「猫先生の弁」
...ルウベンスまたタアナアの描ける暴風の図は人をして恐怖の情を催さしむといへども暴風の齎(もたら)し来る湿気(しっき)の感を起さしむる事稀(まれ)なり...
永井荷風 「江戸芸術論」
...湿つた軒灯に霧のやうな水しぶきがしてゐました...
林芙美子 「蛙」
...ちょうど湿っぽくて冷え冷えとした時刻だった...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...じっとりと脂湿(あぶらじめ)りのする生温い香世子の霊の手を握りながら...
久生十蘭 「雲の小径」
...石田家におけるその夜の家族会議は、湿りに湿って、露もしとどのありさまだった...
久生十蘭 「我が家の楽園」
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エドゥアール・エルネ・プリリュー Edouard Ernest Prillieu 竹本周平訳 「Rosellinia necatrix (R. Hart.) Berlese の子嚢殻の裂開性について」
...そのまわりには銀碧(ぎんぺき)の色湿(うるお)う茂みに...
ホーフマンスタール Hugo von Hofmannsthal 木下杢太郎訳 「チチアンの死」
...「どうしてお友達のところへいらっしゃらないんですか」あだこが彼の顔色をみて云った、「せっかくお迎えがあったのですし、お独りでめしあがってもうまくはございませんでしょう」半三郎は庭を見たままで云った、「あれは十兵衛のさしがねだ、――曽我十兵衛、あだこは知っているだろう」「わたくしがですか」「隠すことはない、土堤(どて)三番町の曽我十兵衛だ、知っているんだろう」「そういう方は存じません」とあだこが云った、声は低く、少しふるえているようであった、「でも、知っていることもあります」「なにを知っている」「金森さまのことです」「十兵衛に聞いたんだ」「そういう方は存じません」とあだこは云った、その声は湿って、もっとふるえを帯びてきた、「わたくし伊賀屋の御主人に聞いたんです、お名まえは存じませんが、金森のお嬢さまは五年の余も許婚(いいなずけ)でいたのに、旦那さまを措いてよその人と逃げてしまった、そのために旦那さまがこんなになってしまったのですって」「その話はやめろ」「いちどだけ云わせて下さい」とあだこは云った、「あたしくやしいんです、そのふしだらなお嬢さんは好きな人と夫婦になって、いまでも立派にやっていらっしゃるというのに、旦那さまのほうはこんなになっていらっしゃる、このままでは一生がめちゃめちゃになってしまいます、旦那さまをこんなめにあわせたのに、そのお嬢さまのほうは仕合せでいる、などということがあっていいものでしょうか」半三郎はまだ庭を見たままで云った、「あだこはその娘が、不幸であればいいと思うのか」「あたしただくやしいだけです」「みすずが仕合せでいるのはいいことなんだ」と彼は穏やかな声で云った、「おれとの婚約は親同志できめたことだ、みすずにはあとで好きな相手ができ、尋常な手段では望みが遂げられないとみて、その相手と出奔した、これはふしだらな気持だけでできることではない、金森は八百石の旗本だ、家の名聞、親の怒り、世間の評、これらをすべて賭(か)けなければならない、みすずはその全部を賭けたのだ、これは勇気のいることなんだ」あだこは手で顔を掩(おお)った...
山本周五郎 「あだこ」
...』と阿母さんの声は湿(うる)んで居る...
與謝野寛 「蓬生」
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