...その声は雨音の鳴り渡る中に殆(ほとんど)気味の悪い反響を起した...
芥川龍之介 「お富の貞操」
...靉靆(たなび)き渡る霞の中に慈光洽(あまね)き御(おん)姿を拝み候...
泉鏡花 「一景話題」
...三三 谷を二つ同時に渡る...
稗田の阿礼、太の安万侶 「古事記」
...私たちが渡る時にもひどく危い思ひを致しまして...
太宰治 「右大臣実朝」
...この同じイギリス海峡を渡る時に彼自身が腕に抱いていた一人の幼児の面影であった...
チャールズ・ディッケンズ 佐々木直次郎訳 「二都物語」
...大なる流行病的熱情が民衆の上を吹き渡るとき...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...お豊(とよ)を載(の)せた老車夫は梶(かぢ)を振(ふ)りながらよた/\歩いて橋を渡るや否(いな)や桜花(あうくわ)の賑(にぎは)ひを外(よそ)に...
永井荷風 「すみだ川」
...浅草寺(あさくさでら)の巨鐘(きょしょう)の声はいかにも厳(おごそ)かにまたいかにも穏(おだやか)に寝静まる大江戸の夜の空から空へと響き渡るのであった...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...バリトンのソロで「ラッパは響き渡る――」の荘厳感など...
野村胡堂 「楽聖物語」
...向うへ渡る見込みはありません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...凜々(りんりん)と響き渡るのです...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...夕明り葉無き木立が行く馬の脚と見えつつ風渡るかな疎らな冬木立に夕明りがさして歩いてゆく馬の脚の様に思へる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...水の上を滑つて四囲の山々に響くと三重にもなつた山彦があちこちから鳴り渡るのであつた...
牧野信一 「沼辺より」
...故に燕を食うは水を渡るを忌み...
南方熊楠 「十二支考」
...この女の手に渡ることでは...
室生犀星 「汽車で逢つた女」
...闇から闇を渡るどん底暮しに...
山本周五郎 「お美津簪」
...室中に響き渡るような大きな声で怒鳴り付けた...
夢野久作 「霊感!」
...水面を渡る微風のまにまに...
モウリス・ルブラン 新青年編輯局訳 「水晶の栓」
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