...ある家の軒下(のきした)に佇(たたず)んだ甚平(じんべい)一つの老人などは渋団扇(しぶうちわ)を額(ひたい)へかざしたまま...
芥川龍之介 「文章」
...杉の葉の蚊遣の煙を渋団扇で追ひ乍ら...
石川啄木 「赤痢」
...正造は渋団扇で汚れた鬚のあたりをあおぎながら...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...松葉の煙に顔をそむけながら渋団扇(しぶうちわ)を矢鱈にばたばた鳴らし...
太宰治 「新釈諸国噺」
...渋団扇(しぶうちわ)で蚊を追いながら実にうまそうに杯(さかずき)をなめては子供等を相手にして色々の話をするのが楽しみであったらしい...
寺田寅彦 「重兵衛さんの一家」
...肥後葉の十一等なんていう渋団扇(しぶうちわ)みたいのや...
徳永直 「工場新聞」
...それからこの渋団扇(しぶうちわ)...
中里介山 「大菩薩峠」
...それでも一茶自身の書いた発句帳、これはその頃の有名な俳人の句を各州に分けて認(したた)めたもの、下へは罫紙(けいし)を入れて、たんねんにしてあった、これと位牌(いはい)、真中に『釈一茶不退位』とあって、左右に年号のあるもの、これだけは大切に保存していました」俳諧師は、話しながら、渋団扇だの、付木っ葉だのを取り出して良斎に見せました...
中里介山 「大菩薩峠」
...七輪の側の渋団扇(しぶうちわ)が燃え出したんだよ」ガラッ八は外から入って来ました...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「誰だい? 隠し芸を、凄い奴を知ってるなあ」という声がかかると、林田は、片手はハーモニカを離す訳にはいかないが、片手には、二月の天龍谿谷の、七十年振りの厳寒というのに、渋団扇を持って、手振り足振り、お睦ちゃんの変装で、舞台へ現われるのだった...
葉山嘉樹 「山谿に生くる人々」
...彼は、それらのひとつひとつを意味もなくかぞへて眼を凝すと、渋団扇とか、歯ブラシなどまでが出窓の手すりにぶらさがつてゐるのまで見えた...
牧野信一 「茜蜻蛉」
...そのために挿(さ)いて来た腰の渋団扇じゃ...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...大切(だいじ)なものは貧乏徳利と渋団扇一枚...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...「これは……お手ずから恐れ入りまする」赤猪口兵衛は腰に挿した渋団扇を一枚取ってサラサラと筆を揮って差出した...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...一枚五文なら安いもので……ヘヘヘ」赤猪口兵衛はモウ一まい渋団扇に筆を走らせて差出した...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...この歌を書いた渋団扇で痳疹の子供を煽いで遣るとなあ...
夢野久作 「狂歌師赤猪口兵衛」
...渋団扇(しぶうちわ)のすがたになって...
吉川英治 「大岡越前」
...のろけるからよ」親方は渋団扇(しぶうちわ)で...
吉川英治 「宮本武蔵」
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