...前にゐた幾人の女中の汗やら髮の膩(あぶら)やらが浸みてるけれども...
石川啄木 「天鵞絨」
...何しろそれは安物の紙風船が雨にぬれて色が浸み出したやうなぼんやりした斑(まだら)に染め上げられ...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...その胸に浸み入るような快い声は...
トルストイ 米川正夫訳 「クロイツェル・ソナタ」
...ニトログリセリンを砂に浸み込ませたものは...
長岡半太郎 「ノーベル小傳とノーベル賞」
...客は醤油の浸みた菜漬を旨さうに噛んでやがて冷えた鐵瓶から急須へ注いで其鐵瓶を炬燵の火へ懸けた...
長塚節 「開業醫」
...それは封蝋の中に電気が浸み込んで...
中谷宇吉郎 「実験室の記憶」
...その知識が実験室にも浸み込んで来ているのである...
中谷宇吉郎 「実験室の記憶」
...その間に水が墨の中に浸み込むので厄介である...
中谷宇吉郎 「硯と墨」
...自然(じねん)と浸み込んで来る光線の暖味(あたたかみ)を...
夏目漱石 「門」
...子供の心にも浸み込んでいた...
葉山嘉樹 「坑夫の子」
...澄んだ浸み透るやうな音楽的な音を立てて...
葉山嘉樹 「万福追想」
...その熱い奴を、フーフー言いながら食う、飯にも、汁が浸みていて、(ああ、こう書いていると、食いたくなったよ!)アチアチ、フーフー言わなきゃあ食えないという、そういう天丼のことを言ってるんです...
古川緑波 「下司味礼讃」
...血肉に浸み透って皮膚のいろまで染っているという彼ら代々の古い感情であったかも知れない...
本庄陸男 「石狩川」
...それは今申したジャムカステラをベシン皿かあるいは丼鉢(どんぶりばち)へ並べてこのカスターソースの湯煎にしないのを掛けて二十分間置きますとソースがすっかりカステラへ浸み込みます...
村井弦斎 「食道楽」
...材料が締って汁が十分に浸み込む...
山本笑月 「明治世相百話」
...白湯の中に浸み込んでいるのだそうですが……...
夢野久作 「狂人は笑う」
...五体から浸み上つて来た...
若山牧水 「木枯紀行」
...そして机のしめりに浸み込む樣にベツトリと木地にくつ着いたまゝ這ひ擴がつてゆくのみで少しも上へは昇らない...
若山牧水 「樹木とその葉」
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