...前にゐた幾人の女中の汗やら髪の膩(あぶら)やらが浸みてるけれども...
石川啄木 「天鵞絨」
...そのこぼれが靴を通して熱した足にひイやりと浸み込む...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...「そんなに非度く浸み附きますか?」と院長が聞く...
鈴木三重吉 「赤い鳥」
...自分はこの春の仕度にいそがしい萬物の中を一人家を出てさまよひ歩りく至る處に自然の惠みを感じる疲れ切り乾ききつた自分の體の骨に感じるやうに柔げられた春は外から浸み込み内には萬感が起る...
千家元麿 「自分は見た」
...夫が言論界や文学や科学の世界にまで浸み渡り始めたのは...
戸坂潤 「日本イデオロギー論」
...すると恰も上手な鍼醫(はりい)が銀の鍼を打つやうに耳の底に浸み透る馬追虫の聲が...
長塚節 「白瓜と青瓜」
...その間に水が墨の中に浸み込むので厄介である...
中谷宇吉郎 「硯と墨」
...夏の間中一足ごとにその足跡に水の浸み出る土地が...
中谷宇吉郎 「泥炭地双話」
...心の底へ浸み渡つて...
夏目漱石 「京に着ける夕」
...爪先に血が浸み出した様子ですが...
野村胡堂 「大江戸黄金狂」
...その底に小意地の悪さが浸みこんでいておもしろい...
野村胡堂 「胡堂百話」
...こりゃ何となく身に浸みるとか...
二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
...洗われた肌には爽昧(そうまい)の巒気(らんき)が浸みとおった...
本庄陸男 「石狩川」
...穢(むさぐる)しい田舍女の一人々々が頭の中に浸み込んだ...
正宗白鳥 「入江のほとり」
...今度は玉子焼鍋の底へ半紙を敷いて胡麻(ごま)の油で濡(しめ)しますがあんまり多過ぎるとカステラが臭くなりますからホンの紙へ浸みるばかりでいいのです...
村井弦斎 「食道楽」
...実によくわたしの皮膚はそれが浸みるのに適している...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...そして気味の悪い様な寒さと寂さが足の先までも浸みて来た...
若山牧水 「みなかみ紀行」
...これは骨の髄まで平和の浸み込んだような文化であって...
和辻哲郎 「鎖国」
便利!手書き漢字入力検索