...」「だつとつて御前(おめえ)さん、そんな駈け出しの胡麻の蠅に鼠小僧の名をかたられちや――」剳青(ほりもの)のある、小柄な男は、まだ云ひ争ひたい気色(けしき)を見せたが、色の浅黒い、唐桟の半天を羽織つた男は、悠々と微笑を含みながら、「はて、このおれが云ふのだから、本望に違え無えぢや無えか...
芥川龍之介 「鼠小僧次郎吉」
...最(も)う少し色が浅黒いとか口が大き過ぎるとかいう欠点があったらかえって宜(よ)かったろうと思う...
内田魯庵 「硯友社の勃興と道程」
...いくらか旅やつれのした、浅黒い、岩乗な、こんな面をして女のことなどを考へてゐるのかしらと思はれるやうな顔が映つた...
田山録弥 「海をわたる」
...そのときオートバイに乗ろうとしていた色の浅黒い青年のほうに向いているところであつた...
G・K・チェスタートン G. K. Chesterton 村崎敏郎訳 「とけない問題」
...蒼い浅黒い顔をなお蒼くして...
豊島与志雄 「溺るるもの」
...髪の毛のこわい、色の浅黒い、がっしりした体格で、濃い眉の下に、眼がくるくるっと太く丸く見えるのが特長だった...
豊島与志雄 「死の前後」
...ごく浅黒い肌(はだ)をし...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...浅黒い顔をば拭き込んだ煤竹(すすだけ)のようにひからせ...
永井荷風 「妾宅」
...どうか旦那」平次の手は、いつの間にやら敷居を掴(つか)んで、挙げた顔――、少し浅黒いが、江戸っ子らしい、聡明な顔には、何やら涙さえ光っているのでした...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...浅黒い引締った顔など...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...色の浅黒い丸ぽちゃの二十歳娘で...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...眼鼻立は整って居りますが、色の浅黒い、口の大きい、決して美しい方ではなく誰にも可愛がられない代り、誰にも憎まれないと言ったたちの女らしく見えました...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...どんな年寄りが出てくるのかと思ったら、色の浅黒い、顔の長いひっつめのいちょうがえしに結った、額に青筋の出ている、お歯黒をつけた、細二子(ほそふたこ)の袷(あわせ)に黒い帯をひっかけ(おかみさん結び)にした女が出て来て、「なんだ今時帰って来て――」と突然(いきなり)どなってつづけた...
長谷川時雨 「古屋島七兵衛」
...色の浅黒い大柄な女だつた...
林芙美子 「瀑布」
...てらてらと艶のある浅黒い顔全体に...
火野葦平 「花と龍」
...浅黒いジプシイたちの顔を見つめてゐた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...お玉の方では、どうせ親の貧苦を救うために自分を売るのだから、買手はどんな人でも構わぬと、捨身の決心で来たのに、色の浅黒い、鋭い目に愛敬(あいきょう)のある末造が、上品な、目立たぬ好みの支度をしているのを見て、捨てた命を拾ったように思って、これも刹那(せつな)の満足を覚えた...
森鴎外 「雁」
...色のやや浅黒いほそおもての顔に...
山本周五郎 「五瓣の椿」
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