...壁に沿うては、五十に余る本箱が、唯古びた桐の色を、一面に寂しく並べてゐる...
芥川龍之介 「戯作三昧」
...遊廓に沿うて流れている溝川の方へとだんだん寄っていって...
有島武郎 「星座」
...常に左側十数歩の処に沿うて行けばよい...
鵜殿正雄 「穂高岳槍ヶ岳縦走記」
...芳郎は己(じぶん)の家に沿うた坂路(さかみち)を登っていた...
田中貢太郎 「赤い花」
...ちょうど宜(よろ)しゅうございました」舟は府城(ふじょう)の城壁に沿うて南へ南へと往った...
田中貢太郎 「蛇性の婬」
...すぐ路傍に沿うて馬方などが時どき馬を繋いでいる木の根本の暗い処に白い物がちらちらと見えた...
田中貢太郎 「餅を喫う」
...そうして、鉄道に沿うた、昔のままの街道の、いかにも自然な、美しく優雅な曲線を、またなつかしいもののように思ってながめるのであった...
寺田寅彦 「柿の種」
...小高い堤(どて)を流るゝ品川堀(しながわぼり)と云う玉川浄水の小さな分派(わかれ)に沿うて居た...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...私はその丘のひとつの峯に立って無数の小さな入江をつくりながらどこまでもうねってゆく岸に沿うて見わたした...
中勘助 「母の死」
...やがて真直に仙台堀に沿うて...
永井荷風 「深川の散歩」
...その岸に沿うた畦道(あぜみち)に...
永井荷風 「元八まん」
...思ふ人に捨てられた女が堀割に沿うた貧家の一間に世をしのび...
永井荷風 「雪の日」
...道は沼に沿うて、蛇(へび)のように陰鬱(いんうつ)にうねっていた...
葉山嘉樹 「死屍を食う男」
...小川に沿うて進んでゐた...
牧野信一 「ダイアナの馬」
...この無くなったなお奥の方から渓流の両岸に沿うて梅の樹が断続して野生して居り...
牧野富太郎 「植物記」
...帰路は海に沿うて南し...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...殊に球磨川に沿うて千七百尺の矢岳を越えて...
吉田絃二郎 「八月の霧島」
...不思議な形をした電車が利根川に沿うて走るのである...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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