...」敏子は沾(うる)んだ眼の中に...
芥川龍之介 「母」
...いつの間にか船首をめぐらせる端艇小さくなりて人の顔も分き難くなれば甲板(かんぱん)に長居は船暈(ふなよい)の元と窮屈なる船室に這(は)い込み用意の葡萄酒一杯に喉を沾(うるお)して革鞄(かばん)枕に横になれば甲板にまたもや汽笛の音...
寺田寅彦 「東上記」
...木下はいつのまにか眼を沾ましていた...
豊島与志雄 「二つの途」
...『扁桃(アメンド)のような恰好をした沾(うるお)いのある眼...
トルストイ 米川正夫訳 「クロイツェル・ソナタ」
...陽春二三月 楊柳斉作レ花春風一夜入二閨闥一楊花飄蕩落二南家一含レ情出レ戸脚無レ力 拾二得楊花一涙沾レ臆秋去春来双燕子 願銜二楊花一入裏一灯の下に横坐りになりながら...
林芙美子 「新版 放浪記」
...月の雫に袂を沾ほされる容易ならぬおもひであつた...
牧野信一 「月評」
...微妙な和やかさに沾んでゐた...
牧野信一 「心象風景(続篇)」
...その時眼が沾んでゐるぢやありませんか...
牧野信一 「心象風景(続篇)」
...雪子の念入りにブラツシをあてられた睫毛が濡れたやうに沾んでゐるのを見た...
牧野信一 「ダイアナの馬」
...それでもセイセイとして何か世俗的とでも称びたいやうな沾ひのない安らかさを感じた...
牧野信一 「冬の風鈴」
...――教会堂の天気鶏の翼が未だ暁の露に沾うてゐる朝まだきに起き出でて...
牧野信一 「変装綺譚」
...長い睫毛か緑色の眼にうつとりと沾んで影を宿してゐた...
牧野信一 「籔のほとり」
...道ゆく人々にわずかにそれを沾ってはいたのだった...
正岡容 「随筆 寄席囃子」
...これは堪(たま)らぬ布が沾(ぬれ)ると...
南方熊楠 「十二支考」
...故に峡中裳を沾(ぬら)すの謡あり...
南方熊楠 「十二支考」
...沾れるから上げておくれようなどと下から聲をかけると...
柳田國男 「瀬戸内海の島々」
...辛(かろ)うじて木葉の雫(しずく)で咽(のど)を沾(うる)おすようになったといって...
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」
...半宵臨別涙沾巾...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
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