...その雨の中を歩いて行く俊助の心は沈んでいた...
芥川龍之介 「路上」
...あたりを占めるものは、すべての密林に於るが如く、完全な沈黙で、それを破るものは只蝉の声と、鶇(つぐみ)(?)の低い、笛に似た呼び声とだけ...
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」
...沈着にせい」と云うて命令しとる様な様子が何やらおかしい思われた...
岩野泡鳴 「戦話」
...臭気がたいへん濃く沈澱(ちんでん)している地区と...
海野十三 「蠅男」
...死の沈黙がおとずれた...
江戸川乱歩 「影男」
...沈潜して研究している結果...
高浜虚子 「俳句への道」
...年月を心にかけし御芳野の花の木蔭にしばしやすらふかた分けてなびく柳も咲きいづる花にいとはぬ春のあさかぜみるが内に槇(まき)のしづえも沈みけり芳野の滝の花のあらしにそれから又...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...ある六月の夕方、日が沈みかけて、空気には乾草や、まだ湯気の立つ家畜の糞や、搾り立ての牛乳の匂いがする頃、ヂューヂャの家の庭先に質素な馬車がはいって来た...
チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「女房ども」
...沈みがちに言った...
ディッケンズ Charles Dickens 岡本綺堂訳 「世界怪談名作集」
...元氣のいゝ人達の中には少數の沈んだ顏もあつた...
寺田寅彦 「寫生紀行」
...そのなんとも言えない沈黙とその無関心な数言との魅力を味わった...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...岸によどみて滞(とゞこほ)り浮ぶ芥(あくた)ともろともにむされて腐れ腐れてこゝに沈み行く...
永井壮吉 「偏奇館吟草」
...あの頑固(がんこ)なのが意気銷沈(いきしょうちん)しているところは...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...その形の確実と構図の安全と色彩の沈着は五十歳の老大家の作品といっても誰も疑うものはなかろう...
野上豊一郎 「レンブラントの国」
...彼女を失つて殆ど絶望の淵に沈んだが...
濱田耕作 「シュリーマン夫人を憶ふ」
...それきり沈んでしまうわけね...
室生犀星 「不思議な国の話」
...青ずんだ灰色のなかに沈んでいた...
山本周五郎 「青べか物語」
...西に陽が沈んでいるだけのように...
吉川英治 「平の将門」
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