...薄汚ない横町の、晝猶暗き路次を這入つた突當り、豚小舍よりもまだ酷い二間間口の裏長屋であつた...
石川啄木 「雲は天才である」
...渠は膝を立直して小さい汚ない机に向つた...
石川啄木 「病院の窓」
...六時から汚ない工場の中に閉じこめられて...
ピョートル・アレクセーヴィチ・クロポトキン Pyotr Alkseevich Kropotkin 大杉栄訳 「青年に訴う」
...半分許り落葉した木の間には汚ない山の地膚を見せてをる...
高浜虚子 「落葉降る下にて」
...汚ない襤褸(ぼろ)をならべて干した...
田山花袋 「田舎教師」
...それともまたその汚ない最後の恋が本当であるか...
田山録弥 「路傍の小草」
...汚ないものでも扱うと一廉謙遜になった様で...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...薄暗い中庭の汚ない壁に向かっていた...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...それにです、第一、相手方の方にして考えてみても、今時、この胆吹山の山腹あたりに、十八文の先生風情に向って誘惑を試むべく、ふくらっ脛(ぱぎ)の白いところを臆面なく空中に向って展開しているような、洒落気(しゃれけ)満々たる女があろうとは思われないし、また、先刻の大きな鷲(わし)にしてからが、良弁(ろうべん)とか弁信とかいったような可愛らしい坊主の頭の一つもあれば、さらってみようとの出来心を起すかもしれないが、この薄汚ない、拾ったところで十八文にしかならない老爺を、わざわざ重たい思いをして空中まで引き揚げてみようという好奇心も起らないでしょう...
中里介山 「大菩薩峠」
...依然として汚ない小舎の中で目を醒ました...
中島敦 「南島譚」
...世の中に何が汚ないと云って石炭たきほどきたないものは滅多(めった)にない...
夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
...彼は室の隅(すみ)に畳んであった薄汚ない蒲団(ふとん)を敷いて...
夏目漱石 「門」
...宗次郎の幽澤(いうたく)坊主を縛つて行きましたよ」「恐ろしく早手廻しだね」「すると――あんな汚ない坊主の何處が良いか知らないが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...壁の汚ないのは平気だが...
長谷川時雨 「テンコツさん一家」
...汚ない手拭使つてるの...
林芙美子 「浮雲」
...こんな汚ない宿屋にゐても面白くないから...
水上瀧太郎 「山を想ふ」
...うす汚ない着物のはじまで...
室生犀星 「蒼白き巣窟」
...今度は腰から煤竹筒(すすだけづつ)の汚ない煙草入を出して...
夢野久作 「近世快人伝」
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