...』『それに余程(よつぽど)の気紛れ者(もん)でね...
石川啄木 「菊池君」
...ところが、気紛れな秋は、この小さな虫に順調な安眠を与えようとはしないで、時ももう十月半ばだというのに、どうかすると夏のような日光の直射と、晴れきった空の藍色とで、虫の好奇心を誘惑しようとする...
薄田泣菫 「艸木虫魚」
...その結果明かになったことは、大体に於いてあの人はああ云う風な洒脱(しゃだつ)な紳士型であるけれども、あれで案外気分屋で、時に依(よ)っては機嫌(きげん)の悪いこともあること、子爵家にはあの人の腹違いの兄に当る、嫡男(ちゃくなん)の正広と云う人があるが、その人とは分けても仲が悪くて、よく喧嘩(けんか)をすること、光代自身は見ていないが、激して来ると兄貴を殴ったりもしかねないと云う話であること、多少酒の上が悪い方で、酔うと随分乱暴をしたものであること、但(ただ)し近来は流石(さすが)に年を取って来たので、泥酔する程飲むようなことはめったになく、従って乱暴もしなくなったこと、尤(もっと)もあの人は亜米利加(アメリカ)仕込みであるから、レディーに対しては礼儀に厚い方で、昔からどんなに酔っ払っても婦人に手を上げたりしたことはないので、その点は安心であること、等々であるが、なお一つ二つあの人の欠点を云えば、何事にも理解が早くて趣味が広い代りに、気紛れで、一つ事に熱中する根気がないこと、人を御馳走(ごちそう)したり、世話したりすることが大好きで、金を散ずることは上手であるが、作ることは下手であること、等々であると、光代は貞之助が尋ねないこと迄も、進んで答えたのであった...
谷崎潤一郎 「細雪」
...初めは例の田舎の文学好きの青年の気紛れに書いた手紙と馬鹿にして読んだが...
田山録弥 「田舎からの手紙」
...それを今日読み返してみた上での気紛れの偶感か...
寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
...先刻(さっき)からお島が微(かすか)な予感に怯(おび)えていた青柳の気紛(きまぐ)れな思附が...
徳田秋声 「あらくれ」
...気紛(きまぐ)れ半分宗教書を繙(ひもと)いたり...
徳田秋声 「縮図」
...気紛れは起さない...
豊島与志雄 「或る作家の厄日」
...ただ気紛れな遊びに過ぎないとしましても...
豊島与志雄 「死因の疑問」
...益満の気紛れ、奔放は、十分に知っていた...
直木三十五 「南国太平記」
...この気紛れな衝動のおかげであった...
アルジャナン・ブラックウッド 森郁夫訳 「秘密礼拜式」
...他の種類の俗物は時として気紛(きまぐ)れに俗物であることをやめる...
三木清 「人生論ノート」
...何とか気紛しが必要で...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...たんにスペインふうやペトラルカ流の気紛れな誇張は勿論のこと...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...また気紛れに作りかけたまま放りだしたような畑だのになっていて...
山本周五郎 「嘘アつかねえ」
...どうかして気紛れに持って出ても...
吉川英治 「忘れ残りの記」
...しかも気紛れや流行や嗜好のために...
デイヴィド・リカアドウ David Ricardo 吉田秀夫訳 「経済学及び課税の諸原理」
...また例の気紛(きまぐ)れだな...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「にんじん」
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