...あんなに気だてが優しくなり...
ワシントン・アーヴィング Washington Irving 吉田甲子太郎訳 「リップ・ヴァン・ウィンクル」
...あんさんは御存じないかも知れませぬがあの姉さんは気だても器量もとりわけ人にかわいがられる生れつきで一家じゅうが大名の児を預かってでもいるようにみんな気をそろえてあの人ばかりをかばうようにしておりましたのにその姉さんがあんさんというものがありながらままならぬ掟(おきて)にしばられていると分ってみれば私がそれを横取りしては罰(ばち)があたるでござりましょう...
谷崎潤一郎 「蘆刈」
...しかし妙子のいない所で雪子の意見を聞くと、こいさんはああ云うけれども、アパート生活をし始めてから半年近くにもなるのだし、もう大分貯金を使い減らしているであろうから、口では立派なことを云っても、恐らくお金なんか返しはしないであろう、それでもこいさんと啓坊の仲なら差支えないであろうが、あたし等が間に這入っていてそんな訳には行かないから、お金ででも、品物ででも、早く返してしまう方がよい、と云い、なお附け加えて、中姉(なかあん)ちゃんは今でも啓坊をお金持のように考えているかも知れないけれど、あたしはこの間じゅうあの家に泊っていて、思いの外内証が苦しいのだなと心付いたことがいろいろあった、たとえば御飯のお数なども驚くほど質素で、晩の食卓にもお吸物の外には野菜の煮(た)き合せのようなものが一品附くだけで、啓坊も看護婦もあたしも皆同じものを食べたのである、お春どんが時々見かねて、西宮の市場から天ぷらだの蒲鉾(かまぼこ)だの大和煮(やまとに)の缶詰(かんづめ)だのを買って来てくれることがあったが、そんな時には啓坊もお相伴(しょうばん)に与(あずか)っていた、斎藤先生の運転手に遣(や)る祝儀なども、なるべく私が気を付けて出すようにしたが、しまいにはいつも私に払わせて知らん顔をしていた、でも啓坊は男だけに細かいことには無頓着(むとんじゃく)な風を装っていたが、何となく油断がならない気がしたのはあの婆(ばあ)やさんと云う人であった、あの人は啓坊思いの忠義者で、気だても優しく、こいさんのためにも随分親切に手を尽してくれたけれども、一方台所の経済は一切自分が切り盛りしていて、一銭二銭のことも無駄(むだ)がないように始末した、と云い、どうも私の見るところでは、あの婆やさんはうわべは実に愛想がよいが、内心ではあたし等の一家、殊(こと)にこいさんには余り好感を持っていないのではないかと思う、と云って何も私に対してそんな様子を見せたのではないが、どうも私はそう云う風に直感した、その辺のことをもっと委(くわ)しく知りたかったら、お春どんはあの婆やさんと始終話し合っていたようであるから、お春どんに聞いたらきっと何か分ることがあるに違いない、何にしてもあの婆やさんがいるのでは、なおさら一文の借金も残して置いてはならない、と云うのであった...
谷崎潤一郎 「細雪」
...気だてのやさしい...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「可愛い女」
...あの人は優しく気だてもよくて...
三上於菟吉訳 大久保ゆう改訳 「自転車乗りの影」
...ひどく気だての優しい女であったが...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「外套」
...気だても素直(すなお)だから...
宮島資夫 「清造と沼」
...気だてもよしとの仰せなれば...
山本周五郎 「日本婦道記」
...袋物屋の主人の世話だそうだが」「そいつはわかってる」「縹緻(きりょう)もいいし気だてもやさしい...
山本周五郎 「ひとでなし」
...温和(おとな)しい気だてのやさしいこでございました...
山本周五郎 「夕靄の中」
...しかし、それは元より、かの女がたれにものぞかせぬ秘密な半面で、小縁にさす蝶の影にも気をとられず、針仕事に他念のない姿をながめる目には、まったく優しい、気だてのいい、押絵(おしえ)を坐らせて見たような美(い)い娘で、「二官もしあわせ者だ、あの縹緻(きりょう)で、ころびばてれんの娘という素性さえなければ、たいした玉の輿(こし)に乗るんだろうになあ」と惜しがる世評に間違いはないのであります...
吉川英治 「江戸三国志」
...もとより息子の嫁の縹緻(きりょう)や気だてなどより...
吉川英治 「三国志」
...女房の金蓮もほんに気だてのいい女でね」「そりゃお仕合わせだ...
吉川英治 「新・水滸伝」
...気だてはいい女なんだが...
吉川英治 「新・水滸伝」
...気だてのおもしろい五十ばかりの沙門(しゃもん)が出て来るのだった...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...気だての良さ、お千賀の美しさ...
吉川英治 「※[#「さんずい+鼾のへん」、第4水準2-79-37]かみ浪人」
...他(ほか)に行く所もないのではございますまいか」「そう思い遣りを懸けたひには限りがない」「心だての好いものと――祖父様(おじいさま)も仰せられていたそうで」「気だてが悪いとは申さぬが――何せい若い男ばかりが多いこの邸に...
吉川英治 「宮本武蔵」
...気だても姉とは正反対に内気にみえる...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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