...「利助どんも大分に評判がえいからおれもすっかり安心してるよ、もう狂(あば)れ出すような事あんめいね」「そうですよ伯父さん、わたしも一頃は余程迷ったから、伯父さんに心配させましたが、去年の春頃から大へん真面目になりましてね、今年などは身上(しんしょう)もちっとは残りそうですよ、金で残らなくてもあの、小牛二つ育てあげればって、此節は伯父さん、一朝に二かつぎ位草を刈りますよ、今の了簡(りょうけん)でいってくれればえいと思いますがね」「実の処おれは、それを聞きたさに今日も寄ったのだ、そういう話を聞くのがおれには何よりの御馳走だ、うんお前も仕合せになった」こんな訳で話はそれからそれと続く、利助の馬鹿を尽した事から、二人が殺すの活(いか)すのと幾度も大喧嘩(おおげんか)をやった話もあった、それでも終いには利助から、おれがあやまるから仲直りをしてくろて云い出し誰れの世話にもならず、二人で仲直りした話は可笑しかった...
伊藤左千夫 「姪子」
...弥此節御執行被遊可然奉存候得共...
伊波普猷 「ユタの歴史的研究」
...此節差当百姓之困窮引比候得者...
伊波普猷 「ユタの歴史的研究」
...高田の俳友(はいいう)楓石子(ふうせきし)よりの書翰(しよかん)に(天保五年の仲冬)雪竿を見れば当地の雪此節(せつ)一丈に余(あま)れりといひ来(きた)れり...
京山人百樹刪定 「北越雪譜」
...此節之胸中は都下にて何程深く御推察被下候とも...
徳永直 「光をかかぐる人々」
...此節ハ困窮シテ中々無尽ドコロデハナイカラ...
中里介山 「大菩薩峠」
...そうでなくてさえ此節は...
野村胡堂 「死の予告」
...此節のやうに、掻つ拂ひや小泥棒ばかり追つ掛け廻して居た日にや腕が鈍(なま)つて仕樣がねえ」ガラツ八の八五郎は、そんな事を言ひ乍ら、例の癖で自分の鼻ばかり氣にして居りました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「最初主人が刄物を持つて居たのさ――、曲者がその手に噛み付いたので、刄物を取落した――曲者はそれを拾つて主人を刺した、といふことになるかな」「すると脇差を取出したのは、曲者でなくて主人といふことになりますね」「曲者が不案内な納戸へ入つて、先づ脇差を取出し、それから主人夫婦の寢部屋へ入つたと思ふより、主人の市之助が、此節物騷だから、脇差を用意して寢て居たといふ方が本當らしくはないか、八」「さう言へば、そんなものかも知れませんね」八五郎は一應この説明で堪能(たんのう)しましたが、説明した平次自身が、却(かへ)つて覺束(おぼつか)なさを感じて居る樣子です...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...外にも叔父を怨んでゐる者は二人や三人はあるんだから、誰がやつたかわからないが、お玉さんだつて、此節の樣子では、親位殺し兼ねませんよ」「お玉は何を怨(うら)んで居るのだ」「好きな男と一緒にしてくれないばかりでなく、隣の方を向いた窓まで、皆んな釘付けにするやうぢや、お玉さんどんなに人間が素直でも、親を怨み度くもなりますよ」「ところで、變なことを訊くが、お前は久米野の家で下女代りにコキ使はれて居ると言つたが、それで腹の底から諦めて居るだらうな」「――」「口のきゝやう、化粧の濃さ、お前は只の素人ぢや無いやうだ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...此節の人にしては珍らしい大痘痕(おおあばた)の上...
野村胡堂 「法悦クラブ」
...此節(このせつ)のように...
野村胡堂 「芳年写生帖」
...そして不思議な事には、此節しげしげと、何処からか手紙が参りますの、その度に母さんは悲しそうに溜息をしていらっしゃるわ」「母さんは其事に就ては、何事も貴女に仰有いませんか」坂口は怪訝(いぶかし)そうに相手の顔を視守った...
松本泰 「P丘の殺人事件」
...此地は此節花盛なり...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...醇を児玉氏へ「せつかく此節遣候(はむ)と存候」と云つてゐる...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...但止宿之事は此節奈何(いかゞ)可有御坐...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...枳園の「此節」は三年前若くは二年前を謂つたものではなささうである...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...此節はお客が少いのでお泊りの方は斷つてゐる...
若山牧水 「熊野奈智山」
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