...女は日本橋檜物町の素人屋の二階を借りて棲んでゐる金貸しをしてゐる者の娘で神田の実業学校に通うてゐた...
田中貢太郎 「水郷異聞」
...彼はまた檜物町の女の棲(す)んでいると云う家の前をあちらこちらしてみたが...
田中貢太郎 「水郷異聞」
...それは明暦三年正月十八日の未の刻で、本郷丸山の本妙寺の法華宗の寺から出火して、折りからの北風に幾派にも分れた火は、下谷の方は神田明神から駿河台へ飛火し、鷹匠町の辺、神田橋の内へ入って、神田橋、常盤橋、呉服橋などの橋も門も番所も焼き払い、西河岸から呉服町、南大工町、檜物町、上槇町、それから横に切れて大鋸町、本材木町へ移り、金六町、水谷町、紀国橋の辺から木挽町を焼き、芝の網場まで往った...
田中貢太郎 「日本天変地異記」
...長吉(ちやうきち)をば檜物町(ひものちやう)でも植木店(うゑきだな)でも何処(どこ)でもいゝから一流の家元(いへもと)へ弟子入(でしいり)をさせたらばとお豊(とよ)に勧(すゝ)めたがお豊(とよ)は断じて承諾(しようだく)しなかつた...
永井荷風 「すみだ川」
...山田春塘の著『日本橋浮名歌妓』は明治十六年六月檜物町(ひものちょう)の芸妓叶家歌吉といへるもの中橋の唐物商(とうぶつしょう)吉田屋の養子安兵衛なるものと短刀にて情死せし顛末(てんまつ)を小説体に書きつづりしものにしてこの情死は明治十三年九月新吉原品川楼の娼妓盛糸と内務省の小吏(しょうり)谷豊栄が情死と相前後して久しく世の語り草とはなれるなり...
永井荷風 「桑中喜語」
...檜物(ひもの)町の小夜菊(さよぎく)師匠」「あ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...檜物町一帶うつかり歩けませんよ」「兎も角も...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「どうしたんだ、八五郎が間違ひでも起したといふのか、檜物町といふと、踊の小夜菊(さよぎく)師匠のところだらう」「その通りで、尤も間違ひを起したのは八五郎親分でなくて、小夜菊師匠の方で」「あの師匠は、此間から變なものに狙はれて居たやうだ、怪我でもしたのか」「怪我ぢやございません、喉を突いて死んだ相で」「何?自害(じがい)をした? あり相も無いことだが」栄耀栄華が好きで、浮氣で、贅澤で、男から男へ飛石のやうに渡つて歩く女は、どう間違つても自殺などはしさうもありません...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「昨夜お前は檜物町へ行かなかつたのか」「宵から寢て居りました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...檜物町へは四半刻(はんとき)ともかゝりません」それが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...檜物町からは近い...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...酉(とり)の上刻に又檜物町(ひものちょう)から出火した...
森鴎外 「護持院原の敵討」
...檜物(ひもの)町...
柳宗悦 「地方の民藝」
...きっとまた檜物町で喧嘩でもして来て...
山本周五郎 「さぶ」
...「檜物町に会ったか」それまでの話がとぎれたとき...
山本周五郎 「ちゃん」
...――つまりおめえと檜物町とおれは...
山本周五郎 「ちゃん」
...檜物町とおれはどうやら店を持ち...
山本周五郎 「ちゃん」
...檜物町や金六町はそうなれる性分と才覚があったから成りあがったんでしょ、おまえさんにはそれがないんだからしようがないじゃないか」「だからよ、だからおれは」「なにがだからよ」とお直は云った、「お前さんの仕事が左前になって、その仕事のほかに手が出ないとすれば、あたしや子供たちがなんとかするのは当然じゃないの、楽させてやるからいる、苦労させるから出てゆく、そんな自分勝手なことがありますか」「おれは自分の勝手でこんなことを云ってるんじゃねえんだ」「じゃあ、誰のことを云ってるの、あたしたちがおまえさんの出てゆくのを喜ぶとでもいうのかい、おまえさん、そう思うのかい」お直はふるえる声を抑えて云った、「――二十日ばかりまえのことだけれど、檜物町がここへ来て、あたしに同じようなことを云ったわ、いまのようでは、うだつがあがらない、うちの仕事をするようにすすめてくれ、そうすればもうちっと暮しも楽になるからって」「やっぱり、檜物町が来たのか」「来たけれどおまえさんには云わなかったし、檜物町にも、あたしは仕事のことには口だしをしませんからって、そう断わっておきました」お直は怒ったような声で続けた、「――おまえさんがそんな仕事をする筈もなし、あたしたちだっておまえさんにいやな仕事をさせてまで、楽をしようとは思やしません、良は十四、おつぎは十三、あたしだってからだは丈夫なんだから、一家六人がそろっていればこそ、苦労のしがいもあるんじゃないの」「そいつも考えた、いちんち、ようく考えてみたんだ」と重吉は云った、「けれどもいけねえ、昨日お店で勘定を貰ってみてわかったが、勘定はこっちの積りの半分たらずで、これからは売れただけの分払いだという、つまりもうよしてくれというわけだ、これまでだって満足な稼ぎはせず、飲んだくれてばかりいたあげくに、見も知らねえ男を伴れこんで、ありもしねえ中から物を盗まれた、もうたくさんだ、自分で自分にあいそがつきた、おらあこのうちの厄病神だ、頼むから止めねえでくれ、おらあ、どうしてもここにはいられねえんだ」「そいつはいい考えだ」と云う声がした...
山本周五郎 「ちゃん」
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