...感謝祭に来た時には荊棘(いばら)の迷路であった十坪ほどの地面が今は隙間(すきま)もなく花に埋まって...
有島武郎 「フランセスの顔」
...私は曳網で、熱帯性の貝や、棘皮動物や、甲殻類や、その他私には物珍しい種類を引上げつつあったのだが、而もこのような美しい眺望から眼を離して、曳網の泥土に頭をつっこんでいるということは、困難だった...
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」
...用心深く美学の荊棘(けいきょく)地に立てこもった...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...銀の荊棘(いばら)の冠をかぶり...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...そんな下手(へた)な芝居の色男みたいな名前は」「口が悪いな、親分は、――公儀御用御大工棟梁依田土佐の下請負で、うんと身上(しんしょう)を拵(こさ)えた男ですよ」「金持と付き合っていると、きっと損をするよ、一緒に呑んでも、先に財布を出すのは、必ず貧乏人の方だ」「今日は機嫌が悪いね、親分は」「一々お前に逆(さか)らって済まねえが、――今朝っから気色(きしょく)の悪いことが続くんだよ、家主(おおや)の親仁(おやじ)がやって来て、立退く約束で家賃を棒引にした店子(たなこ)が、此方の足元を見て、梃(てこ)でも動かねえから、ちょいと十手を持って来て、チラ付かせてくれというし、金沢町の質屋で浪人者が押借りをして居るからちょいと十手を持って来て――」「成程そいつはよくねえ、銭形の親分を用心棒と間違えちゃ腹も立つでしょうが、あっしの話は――」「新造で、棘で、石井常右衛門だろう」「先を潜(くぐ)っちゃいけません、あっしの頼まれたのは、その石井常右衛門じゃない――石井依右衛門の女房と言っても、こいつは妾(めかけ)だ、お通(つう)と言って三十二――いやその綺麗なことと言ったら」「待ってくれ、お前に言わせると、女は綺麗なのと汚ないのと、それ切りしか無いことになるが――」「それで沢山ですよ、そのお通というのは先身は尼(あま)さんだと聴いたら、親分だって驚きますよ、今は毛を伸ばして、世間並の良い年増(としま)だが、三、四年前までは、目黒の尼寺で、行い済していたそうで」「フ――ム」「それを仕事のことで目黒へ行った依右衛門が、大夕立に降られて尼寺に飛込み、お茶を一杯振舞われたのが縁で、無理に身受をして髪を延ばさせ――」「お言葉中だがね、八」「へエ」「尼さんを身受するというのは、少し変じゃないか、何処(どこ)の国にそんな掟(おきて)があるんだ」「目黒国(こく)ですよ、へッ、へッ、――訊(き)いてみると、前の亭主に死に別れた時、親類の亡者共が寄ってたかって、身上(しんしょう)を滅茶々々にした上、内儀のお通に無理に貞女を立てさせて、嫌がるのを強引(ごういん)に頭を円(まる)めさせて尼寺へ投(ほう)り込んでしまったんだそうで、殺生じゃありませんか」「それから何(ど)うしたえ」銭形平次も少し面白くなった様子です...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...棘(とげ)でも刺されるやうに...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...棘(いばら)や木の枝が...
久生十蘭 「ノンシャラン道中記」
...骨棘と同じくらいのひどい悪条件だったと思わないか...
アーネスト・ヘミングウェイ Ernest Hemingway 石波杏訳 Kyo Ishinami 「老人と海」
...顏付にも音聲にも棘(とげ)がなくつて...
正宗白鳥 「昔の西片町の人」
...荊棘(いばら)が一杯生えて居つて...
森鴎外 「假名遣意見」
...いばら〔荊棘〕だらけの学問がある...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...ものを云うにもなんとなく棘(とげ)が感じられた...
山本周五郎 「日本婦道記」
...過去の荊棘を語る人もあるが...
吉川英治 「折々の記」
...女の皮膚は弱いというが鏡にかえて剣を抱けば剣は正義の心を強めてくれるわたしはすすんで荊棘(けいきょく)へ入る父母以上の恩に報いる為にまたそれが国の為と聞くからに楽器を捨て...
吉川英治 「三国志」
...茨(いばら)の棘(とげ)を頬ばっているように...
吉川英治 「新書太閤記」
...急に棘(とげ)のある空気が...
吉川英治 「親鸞」
...棘(とげ)のある白薔薇(しろばら)へ触(さわ)るように...
吉川英治 「宮本武蔵」
...荊棘林中に自在を得るの義なり...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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