...彼の才あつて然も杳(えう)として天下に知られざるは心惜しき思せらる...
石川啄木 「閑天地」
...姿を消して杳(よう)として行方が知れなくなったこの麗人の身の上を...
海野十三 「蠅男」
...」前後左右どちらを見ても、ただ杳々茫々、脚下を覗いてもやはり際限なく薄みどり色のほの明るさが續いてゐるばかりで、上を仰いでも、これまた蒼穹に非ざる洸洋たる大洞、ふたりの話聲の他には、物音一つ無く、春風に似て春風よりも少しねばつこいやうな風が浦島の耳朶をくすぐつてゐるだけである...
太宰治 「お伽草紙」
...杳(よう)として判明せぬのである...
橘外男 「グリュックスブルグ王室異聞」
...隨つて侯と彼れとの關係は次第に杳遠と爲りつゝありしと雖も...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...事実の彼方という杳(はる)けさが...
豊島与志雄 「同胞」
...桝三河ト曰フモノ僉(ミナ)創立ノ旧家ナリト雖亦杳(ハルカ)ニ之ニ劣レリ...
永井荷風 「上野」
...舟は杳然(ようぜん)として何処(いずく)ともなく去る...
夏目漱石 「薤露行」
...大和魂はそれ天狗(てんぐ)の類(たぐい)か」主人は一結杳然(いっけつようぜん)と云うつもりで読み終ったが...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...杳(よう)として婚家へも何処へも音信がない...
野口雨情 「小川芋銭先生と私」
...杳として眺望すれば街路を這ひ行く蛆蟲ども生きたる食餌を暗鬱にせり...
萩原朔太郎 「氷島」
...その後杳として姿を現わさなかった「ホヴァス」の通信員ジョン・ハッチソン...
久生十蘭 「魔都」
...それ以來杳として銀笛の音は聞えなかつた...
牧野信一 「緑の軍港」
...クルーゼ夫人の方は戦後に杳として消息が知れない...
三好達治 「オルゴール」
...杳(よう)としてその消息をたったままとなり来りました...
吉川英治 「江戸三国志」
...杳として分らない...
吉川英治 「平の将門」
...杳(よう)としてその影を京大坂の附近では見かけたことがないと誰もいう...
吉川英治 「宮本武蔵」
...杳(よう)として不明であったのだ...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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