...杳(えう)として目覩(もくと)しがたきものは...
石川啄木 「閑天地」
...山路を三里素足で歩いた方が杳(はる)か優(ま)しだ...
石川啄木 「天鵞絨」
...霞たつ暖い日で、山は空と溶け合うて、ややともすればその輪廓を見失うほど、杳(はる)かに、そして幽(かす)かなものであった...
大下藤次郎 「白峰の麓」
...同博士一行の足跡は杳(よう)として何らの手懸りもなく...
橘外男 「令嬢エミーラの日記」
...杳(はる)かに遠い過去に没し去つた...
田山花袋 「ある僧の奇蹟」
...夕陽海に沈んで煙波杳(よう)たる品川の湾に七砲台朧(おぼろ)なり...
寺田寅彦 「東上記」
...杳然聞ゆるなきの末路に立てり...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...去る波の今書いた真を今載(の)せて杳然(ようぜん)と去るを思わぬが世の常である...
夏目漱石 「虞美人草」
...どの女も、蒲団の中の匂ひは同じなのだなと、直吉は、遠く杳かに、どよめくやうな、万歳々々の声を耳にしてゐた...
林芙美子 「瀑布」
...二十二三のすらりとした断髪の〈その女〉はその後杳として行衛が知れないのだった...
久生十蘭 「金狼」
...杳(よう)として消息を絶ち...
火野葦平 「花と龍」
......
逸見猶吉 「逸見猶吉詩集」
...交川君は何故かそれ以来杳として姿を現さなくなり...
牧野信一 「疑惑の城」
...今井は杳然(ようぜん)として死(しん)だ...
松崎天民 「友人一家の死」
...「杳然寸耗なし」である...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...杳(よう)として何も聞えていず...
吉川英治 「私本太平記」
...備後(びんご)の尾道(おのみち)へ落ちて行ったとあるが――杳(よう)としてしばらく所在が知れなかった...
吉川英治 「新書太閤記」
...杳(よう)として不明であったのだ...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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