...朧げなりとも浮び上る私の蜃気楼のある事を...
芥川龍之介 「後世」
...いや全く芥火の朧げな光のさした...
芥川龍之介 「邪宗門」
...実際その時はそうして見たら、ふだんは人間の眼に見えない物も、夕暗にまぎれる蝙蝠(こうもり)ほどは、朧げにしろ、彷彿(ほうふつ)と見えそうな気がしたからです...
芥川龍之介 「妖婆」
...欧羅巴の事情を朧げながら...
井上準之助 「最近欧米に於ける財政経済事情」
...卿は狂人であったのです」高い帽子をいただき鋤を担いだゴーの黒い影法師が暮れ行く空に朧げな外線を劃(かく)しながら窓硝子を過ぎて行った...
チェスタートン Chesterton 直木三十五訳 「作男・ゴーの名誉」
...幽霊の自分の上に及ぼす勢力とその光とを朧げながら結び着けて...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...明治初年に於ける世界の大勢が朧げながら伺はれる...
土井晩翠 「新詩發生時代の思ひ出」
...一を聞くと、十に拡げるのが、名人じゃ、この男は――)と、思ったが、そうしたことは、斉彬公から聞いてもいて、朧げながら、自分も感じているので「そう」と、頷いた...
直木三十五 「南国太平記」
...このへんてこなる方角をさして行け春の朧げなる柳のかげで 歌も燕もふきながされわたしの俥やさんはいつしんですよ...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...それはいかに朧げにせよ氣附く又知るといふことなしには行はれぬ...
波多野精一 「時と永遠」
...ここに吾々はすでに神の主體的同一性と創造的動作との朧げなる啓示を見るであらう...
波多野精一 「時と永遠」
...また朧げな地平線を遙かにのぞむ時――その時...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...その聲のアクセントの描く曲線は朧げながら辿れるやうな氣もしますけれど...
堀辰雄 「プルウストの文體について」
...「友アリ遠方ヨリ来ル」云々に就いての解釈を朧げに憶えてゐる...
牧野信一 「余話」
...かくも朧げに記憶の向ふに薄れてゐるか――と...
牧野信一 「余話」
...千鶴子のことも朧げながら早や察しているかと頷かれる節があった...
横光利一 「旅愁」
...墓地の朧げな怖ろしさや...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...数時間前から朧げな幻が見えており――混沌とした幻で...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「時間からの影」
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