...昨年の秋鳥部寺(とりべでら)の賓頭盧(びんずる)の後(うしろ)の山に...
芥川龍之介 「藪の中」
...だが幸い、昨年の秋、二町ばかりの下流に吊り橋がかけられた...
石川欣一 「可愛い山」
...(十五) 我が四畳半(六)昨年の秋となりぬ...
石川啄木 「閑天地」
...一昨年の秋、私はたまたま昔の阿蘭陀書房、即ち今日のアルスの北原鐵雄さんに、あなたはうちで出した芥川のものを持つてゐるさうですねえ、といはれて、その北原さんに、羅生門を出されたのは、あなたのおいくつのときでしたと申しましたが、北原さんの年齡、それは必ずしも羅生門のためばかりのわけではなく、芥川さんの始めと終りの二度、芥川さんが生涯で一番元氣であつた時と、おそらくはその中間を空白でゐて、また、一番へこたれてしまつてゐた時とに會つてゐる、北原さんのまはりあはせを承知してゐて、その年齡をたづねたのですが、それはそれとしておきまして、北原さんのさつぱりとした昔話は、少くとも、羅生門出版の由來については、淡々として話をされてゐたが、その因縁は全くもつて初耳のことでありましたから、今日はそれを一寸、みなさんに、お傳へ致しておかうと思ひます...
小穴隆一 「二つの繪」
...しかるに、昨年の秋、山田君から手紙が来て、小生は呼吸器をわるくしたので、これから一箇年、故郷に於いて静養して来るつもりだ、ついては大隅氏の縁談は貴君にたのむより他(ほか)は無い、先方の御住所は左記のとおりであるから、よろしく聯絡(れんらく)せよ、という事であった...
太宰治 「佳日」
...ところが昨年の秋...
太宰治 「服装に就いて」
...何と驚異的な精力ぞ!それが一昨年の秋...
豊島与志雄 「樹を愛する心」
...藤子は手術の缺陷のあつた爲めか盲膓炎を再發して昨年の秋に死んだのである...
南部修太郎 「疑惑」
...天保十三年の水野忠邦の改革でおさえられ、自然と舶載もとまったが、昨年の秋ごろ、長崎屋という呉服屋が京橋に店をひらき、支那から仕入れた呉絽を一と手に売り出したので、金に糸目をつけぬおおどこの娘や芸者が競って買い求め、年増は小まん結びに、若向きは島原結びというのにするのがこのごろの流行(はやり)...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...昨年の秋、彼が武蔵温泉に行った留守宅に、侵入して来たおかしな泥棒の話は、マンから聞かされていた...
火野葦平 「花と龍」
...昨年の秋に何が起つたか...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...三年間ほどは御愛情があるふうで御関係が続いていましたが、昨年の秋ごろに、あの方の奥様のお父様の右大臣の所からおどすようなことを言ってまいりましたのを、気の弱い方でございましたから、むやみに恐ろしがっておしまいになりまして、西の右京のほうに奥様の乳母(めのと)が住んでおりました家へ隠れて行っていらっしゃいましたが、その家もかなりひどい家でございましたからお困りになって、郊外へ移ろうとお思いになりましたが、今年は方角が悪いので、方角避(よ)けにあの五条の小さい家へ行っておいでになりましたことから、あなた様がおいでになるようなことになりまして、あの家があの家でございますから侘(わび)しがっておいでになったようでございます...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...一昨年の秋に家を建て...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...それは二年まえからのことだそうで、森半太夫の話によると、一昨年の秋に、三人の娼婦が養生所へ救いを求めて来た...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...一昨年の秋の初め頃...
夢野久作 「霊感!」
...そこの二階の小部屋におちつき、劉唐は、野太刀を壁の隅に立てかけると、下にひざまずいて、「……昨年の秋、九死に一生を得させていただいた大恩人の宋江さまへ、あらためて、頭領の晁蓋(ちょうがい)以下、呉学人、公孫勝、阮(げん)の三兄弟などに代りまして、このように、真底(しんそこ)、お礼申しあげます...
吉川英治 「新・水滸伝」
...この輦(くるま)は、昨年の秋、彼と玉日とが婚儀をあげるについて、月輪の九条家が新調した華美を極めたものである...
吉川英治 「親鸞」
...御殿場から歩いてこの広大の野原を横断したのは一昨年の秋であった...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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