...そして一昨年の秋中尉に昇進してからは...
石川啄木 「鳥影」
...一昨年の秋、私はたまたま昔の阿蘭陀書房、即ち今日のアルスの北原鐵雄さんに、あなたはうちで出した芥川のものを持つてゐるさうですねえ、といはれて、その北原さんに、羅生門を出されたのは、あなたのおいくつのときでしたと申しましたが、北原さんの年齡、それは必ずしも羅生門のためばかりのわけではなく、芥川さんの始めと終りの二度、芥川さんが生涯で一番元氣であつた時と、おそらくはその中間を空白でゐて、また、一番へこたれてしまつてゐた時とに會つてゐる、北原さんのまはりあはせを承知してゐて、その年齡をたづねたのですが、それはそれとしておきまして、北原さんのさつぱりとした昔話は、少くとも、羅生門出版の由來については、淡々として話をされてゐたが、その因縁は全くもつて初耳のことでありましたから、今日はそれを一寸、みなさんに、お傳へ致しておかうと思ひます...
小穴隆一 「二つの繪」
...……まだおわかりになりませんの……一昨年の秋...
辰野九紫 「青バスの女」
...それでもさすがに恥じているので曖昧な返事をしていると菊崎は、じゃ素人ですね、と久能の避けているところに触れて来て、終には久能もかくしきれず、昨年の秋の末頃、僕はある純潔な娘と恋愛に落ちたのですが、ところが今年の二月頃、僕は突然異常を感じて、この病院に通い始めたんですと告白すると菊崎は眉を寄せて、それであなたに覚えがあるんですか、ときき、久能は面を伏せていい難そうに、いや、全然、それで僕は勿論、彼女に詰問したんですが彼女は頑強に潔白を主張するのですよ...
豊田三郎 「リラの手紙」
...遂(つい)には抱えの女供(ども)にまで厄介者扱(あつかい)にされ出したのでとうとう一昨年の秋しょんぼりと沢の家を出た...
永井荷風 「雪解」
...昨年の秋鉄道の方でも...
中谷宇吉郎 「凍上の話」
...一昨年の秋頃から...
中谷宇吉郎 「雪を降らす話」
...それは昨年の秋のこと――...
野村胡堂 「水中の宮殿」
...昨年の秋、秋作氏の求婚にたいして、あなた、貧乏だから、いや、と、にべもない返事をしたのは、決して本心ではなかったのだ...
久生十蘭 「キャラコさん」
...昨年の秋、彼が武蔵温泉に行った留守宅に、侵入して来たおかしな泥棒の話は、マンから聞かされていた...
火野葦平 「花と龍」
...一昨年の秋の或る朝...
堀辰雄 「菜穂子」
...一昨年の秋の或る朝...
堀辰雄 「楡の家」
...昨年の秋から動き出したが...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「本命馬」
...宇治へおいでになりますことは昨年の秋ごろから以前よりもはげしくなったようでございます...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...○さて自分が毎朝顔を洗う二階の窓から、富士山の方角すなわち西々南に見える多摩川対岸の丘陵地帯は、この私のいう八日節供の風習の、比較的濃厚に伝わっている区域なのであるが、昨年の秋の頃、よくこの辺をあるきまわる稲垣、石井などという青年の口から、ミカエリバアサンの話というのを私は聴(き)いた...
柳田国男 「年中行事覚書」
...そこの二階の小部屋におちつき、劉唐は、野太刀を壁の隅に立てかけると、下にひざまずいて、「……昨年の秋、九死に一生を得させていただいた大恩人の宋江さまへ、あらためて、頭領の晁蓋(ちょうがい)以下、呉学人、公孫勝、阮(げん)の三兄弟などに代りまして、このように、真底(しんそこ)、お礼申しあげます...
吉川英治 「新・水滸伝」
...昨年の秋郷里の名古屋から上京して來たとかで亭主は目下某官署の腰辨を勤めて居るのである...
若山牧水 「一家」
...御殿場から歩いてこの広大の野原を横断したのは一昨年の秋であった...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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