...(七) 権威は勝利者の手にあり一昨年の夏なりきと覚ゆ...
石川啄木 「閑天地」
...昨年の夏には、玄関の傍に南天燭(なんてんしょく)を植えてやった...
太宰治 「彼は昔の彼ならず」
...昨年の夏、私は文芸週報「ヌーヴェル・リテレール」の新刊紹介の欄でミオドラック・イヴロバッツ著『ジョゼ・マリヤ・ド・エレディヤ、その生涯及び著作』、『戦勝標の淵源』という広告を、ふと見出して、苦心の結果が世に出た事を初めて知った...
辰野隆 「二人のセルヴィヤ人」
...昨年の夏は田植最中に大勢官吏が押込んで來て...
田中正造 「土地兼併の罪惡」
...――Tさんはとう/\死んださうな、葬式には私も列したいと思ふ、読経回向しなければならない、Tさんは不幸な人だつた、幼にして母を失ひ、継母にいぢめられ、やゝ長じては父に死なれて、多少の遺産を守るに苦しんだ、そしてさらに不治の病気に犯され、青春の悦楽をも味ふことが出来なかつた、彼は樹明君の幼馴染であり、その縁をたどつて、私は一昨年の夏、庵が整ふまで、一ヶ月ばかりの間、その離座敷に起臥してゐた、彼は善良な人間だつた、句作したいといつて、私の句集なども読んでくれた、私は彼の余命がいくばくもなからうことを予感してゐたが、……樹明君は情にあつい人である、Tさんの友達としては樹明君だけだつたらしい、樹明君は病床のTさんを度々おとづれて、或る時は、東京音頭を唄うて、しかも踊つて慰めたといふ、病んで寂しがるTさんと酔うて踊る樹明君との人間的感応を考へるとき、私は涙ぐましくならざるを得ない...
種田山頭火 「其中日記」
...昨年の夏私が国へ帰って後...
豊島与志雄 「生と死との記録」
...昨年の夏、スケネクタディにシェファー博士を訪れた時は、この人工降雨術がまだ不評判な時であった...
中谷宇吉郎 「雨を降らす話」
...この観測所は、昨年の夏、米国気象台の手で建てられたものである...
中谷宇吉郎 「黒い月の世界」
...もう一昨年の夏の話であるが...
中谷宇吉郎 「清々しさの研究の話」
...親父(おやじ)は昨年の夏なくなったんだよ」「へっ」といって木之助はしばらく口がふさがらなかった...
新美南吉 「最後の胡弓弾き」
...もう昨年の夏から...
野村胡堂 「青い眼鏡」
...こうやってとうとう昨年の夏まできてしまったのだ...
浜尾四郎 「黄昏の告白」
...実は、これを余り手荒く扱うと、窓枠全体がそのままどなたかの頭の上に落ちて来る危険があるのであって、現に昨年の夏も、下宿の独逸(ドイツ)人がこの窓枠の下敷きになって、一夏中、片足を使えないほどの手ひどい目にあったこと……折柄(おりから)、窓のそとは満潮(グラン・マレ)で、あぶくを載せた上潮の(うねり)が、くどくどと押し返し、巻きかえし、いつ果てるとも見えない有様であった...
久生十蘭 「ノンシャラン道中記」
...それが一昨年の夏だったか...
古川緑波 「富士屋ホテル」
...――それは一昨年の夏でしたが...
堀辰雄 「若菜の卷など」
...平賀元義なる名は昨年の夏羽生(はにゅう)某によりて岡山の新聞紙上に現されぬ...
正岡子規 「墨汁一滴」
...いずれも昨年の夏迄に不良少女や友達に与えられたものである...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...昨年の夏六月...
吉川英治 「新書太閤記」
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