...「昔々」と云へば既(すで)に太古緬(たいこめんばく)の世だから...
芥川龍之介 「澄江堂雑記」
...」今度はやや近寄って、僧の前へ、片手、縁の外へ差出すと、先刻(さっき)口を指したまま、鱗(うろこ)でもありそうな汚い胸のあたりへ、ふらりと釣っていた手が動いて、ハタと横を払うと、発奮(はずみ)か、冴(さえ)か、折敷ぐるみ、バッタリ落ちて、昔々、蟹(かに)を潰(つぶ)した渋柿に似てころりと飛んだ...
泉鏡花 「海異記」
...多賀屋へ聟にでも入らなきや身の立てやうはない」「――」「親と親との昔々の約束は...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...――昔々の大昔は武家だったかも知れないが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...昔々の大昔の色男だ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...お前はヌケヌケと昔々大昔のカチカチ山の話か何んかする気かえ」「そんなに気のきかねえ話じゃありませんよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...名取屋三七郎の家の兩隣には、三軒長屋が二た棟あるが、不思議なことに皆んな男世帶だ、――三七郎の妾のお鮒が綺麗なんで、女といふ女は住みつかないんだ相ですよ」「お前の話は相變らず馬鹿々々しいな」「まア、聽いて下さいよ、話はこれから面白くなるんで」「フーム」「三軒長屋が二つ、その一つは北の方にあつて、按摩(あんま)の年寄夫婦が一と組と、浪人波多野虎記(とらき)と、小博奕(こばくち)を渡世にしてゐる、勇吉といふ若いのが住んでゐる、按摩の女房の婆さんなんか女のうちに入らない」「――」「南隣の三軒長屋には、馬鹿の猪之助と、漁師の申松(さるまつ)が住んで居て、中の一軒は空家だ、その空家にはお化けが出るといふ噂があつて、この一年借り手が無い、――昔々、一人者の婆さんが、臍繰(へそくり)を五貫六百ばかり殘して死んだ相だから、多分それに思ひが殘つてゐるだらうといふことで――」「恐ろしくケチなお化けだな」「ところで、この三軒長屋二た棟に住んでゐる、六人の住人のうち、按摩夫婦の二人の外は、皆んな名取屋三七郎の妾のお鮒に夢中なんだから面白いぢやありませんか」「そんな話は、ちつとも面白くは無いよ、馬鹿々々しい」「錢形の親分に面白がらせようなんて、そんな娑婆(しやば)つ氣はありませんよ、當人同士は妾のお鮒に聲でも掛けて貰はう、せめて一と眼振り向いて見られようと、そりや夢中なんで」「そんなのが四人も五人も大川端に集まるんだから江戸は廣いなア」「先づ第一番に白痴(ばか)の猪之助――この男は取つて二十九の良い若い者だが、釘が一本足りないばかりに、まともな仕事が出來ねえ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「ところで、伊八を、うんと怨んで居る者はなかつたのか」「怨んでゐるといふわけぢやありませんが、兄さんが昔々、何んとか言ふ大名のお出入りで、その頃知合だつたといふ、お隣の久吉さんと檜木さんは、月に一度や二度は、兄さんをつかまへて金をせびつて居りました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「箱根へ湯治(たうぢ)に行つた知合ひからお土産(みやげ)に貰つたのだよ、昔々、朝鮮の國から、日本の朝廷に御使者が來た時、持つて來た寶の箱に一八と書いてあつた、叩けば開かれる――といふ謎(なぞ)だつたと物の本に書いてあるさうだよ」平次は妙な話を始めました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...昔々の家に鳴るオルゴールの音色のように...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...昔々母の懐中(ふところ)でまどろむやうな...
萩原朔太郎 「冬の情緒」
...昔々の名優大井新太郎が一幕出してゐる...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...昔々私に起つた不幸なことや...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...尊げな言葉は昔々聞かされてゐるが...
正宗白鳥 「新しくもならぬ人生」
...昔々、プラトーンの「リパブリック」など哲学としてよんだ時代からぼんやり盲目窓のように立っていたものが、こういう現実的な光りでパッと開いたような面白さ...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...あの神通力と不思議な武器とをもって仕合や戦闘にのぞんだ昔々の遊歴の騎士みたいに見受けられる...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...一一七昔々これもあるところにトトとガガと...
柳田国男 「遠野物語」
...昔々ある処に長興寺というお寺があった...
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」
便利!手書き漢字入力検索