...僕が昔から材料を採(と)るのは大半この「昔々」と同じ必要から起つてゐる...
芥川龍之介 「澄江堂雑記」
...どうも「昔々」だけ書いてすましてゐると云ふ訳には行(ゆ)かない...
芥川龍之介 「澄江堂雑記」
...昔々エジプトの或王様が宮廷の図書室の戸口に「霊魂慰藉(いしゃ)の宝庫」と誌した...
辰野隆 「愛書癖」
...『昔々爺さんと婆さんとあつたげな...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
...多賀屋へ聟にでも入らなきゃ身の立てようはない」「…………」「親と親との昔々の約束は...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「昔々の大昔、筑前の國の皇居の庭掃き爺さんが、尊い女御(にようご)を見て一世一代の戀をした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...昔々の名優大井新太郎が一幕出してゐる...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...悲しみも弁へ憂慮も知り、そして春の波のやうに長閑な感情に豊かなあの秀才が、陋ろうの酒も厭はず、醇々として芸術の道に遊びつゝある風情は、昔々、今日はローマの高殿でハンガリアのトカエル酒に、酔ふて月をうたひ明日はピザの露路裏で密造のドブロクに酔ひ痴れた友と共に遠征の覇気を養ふたマーク・アントニーの颯爽たる有様が忍ばれるやうだ...
牧野信一 「ひとりごと」
...お伽噺△昔々ある処に七郎といふ大へんに勇ましい少年がありました...
牧野信一 「〔編輯余話〕」
...」北欧の――ゴール? と云つたか、ガスコンであつたか? ちよつと堂忘れしたが、奴等のなりはひは長蛇船のかひをそろへた海賊であつた、昔々、未だどちらを向いても王国などゝいふものもなく誉れに富んだ騎士も住まず、桂冠詩人の詩集はおろか、羊の皮表紙の物語本一冊もなかつた荒海の、荒地の、ツンドラ地帯に吹きまくる嵐を衝いて掠奪と殺りくが勝負であつたイクサ人達は、偃月刀をふりかざして生きまくつてゐるのみであつたが、人間のロマンテイシズムの血は文明の深差に関はりなく、事態が非常であればあるほど限りない夢であつて、それらの海賊は、海賊ながらも全部が、詩人であつたと聞く...
牧野信一 「浪曼的月評」
...誰が!寄席ぐろてすく昔々大正の頃...
正岡容 「艶色落語講談鑑賞」
...昔々野猪と蛙が平地から山の絶頂まで競争しようと懸かった...
南方熊楠 「十二支考」
...昔々物語合考)、故に新婚の當夜迄、素女たりしを證するに必要な犬張子を其道具中に入れたのを女兒共に問れて白地(あからさま)に説明し難く、守りの厭勝のと種々牽強したので、之を犬形にしたは、辟邪の爲たる事、舊説通りだらう...
南方熊楠 「蓮の花開く音を聽く事」
...そのころ『昔々春秋』といって大阪の中井履軒が...
柳田国男 「故郷七十年」
...一一七昔々これもあるところにトトとガガと...
柳田国男 「遠野物語」
...昔々至って貧しい老女の家に...
柳田国男 「年中行事覚書」
...昔々、いつのころとも知れない遠い昔、そうしてまた何処にあるかもはっきりしない、ある一つの国に、親が六十歳になると、山へ棄ててこなければならぬという、とんでもない習わしがあった...
柳田国男 「母の手毬歌」
...昔々時鳥と郭公は兄弟でまたは姉妹で...
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」
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