...葉子が顔を近寄せて何かいおうとすると昏々(こんこん)としてたわいもなくまた眠りにおちいるのだった...
有島武郎 「或る女」
...外はすでに黄昏(たそがれ)であった...
梅崎春生 「桜島」
...池のごとくに澄みきった黄昏(たそがれ)の海に...
鈴木三重吉 「千鳥」
...其地如レ敷レ玉、闕台映、楼台玲瓏、目所レ不レ見、耳所レ不レ聞、携レ手徐行、到二一大宅之門一、女娘曰、君且立二此処一開レ門入レ内、即七豎子来相語曰、是亀比売之夫也、亦八豎子来相語曰、是亀比売之夫也、茲知二女娘之名亀比売一、乃女娘出来、嶼子語二豎子等事一女娘曰、其七豎子昂星也、其八豎子者畢星也、君莫レ恠終焉、即立レ前引導、進入二于内一、女娘父母共相迎、揖而定坐、于レ斯称二説人間仙都之別一、二談議人神偶会之喜一、乃薦二百品之芳味一、兄弟姉妹等、挙レ杯献酬、隣里幼女等、紅顔戯接、仙歌寥亮神逶、其為二歓宴一、万二倍人間一、於レ茲不レ知二日暮一、但黄昏之時、群仙侶等漸々退散、即女郎独留、雙眉接レ袖、成二夫婦之理一、万葉詩人は「二人入居て、老もせず死にもせずして、永世に有けんものを」と歌い、『古事記』は海神の宮殿を形容して、「魚鱗の如(ゴト)作れる宮」と云い、二神結婚の条に、美智の皮八重を敷き、其上に畳八重を敷きしを記す...
高木敏雄 「比較神話学」
...承応(しょうおう)二巳年(みどし)八月十一日の黄昏(ゆうぐれ)のことであった...
田中貢太郎 「累物語」
...こう云う天気に黄昏(たそがれ)の街を歩くと...
谷崎潤一郎 「The Affair of Two Watches」
...そしてあなたの前で昏倒した...
豊島与志雄 「常識」
...役場の知らせもあつてな」「何時の事です?」「去年の春だよ」「戰死した事になつてゐるンですか?」昏い山々はひしめきあつて風を呼びあふかのやうに...
林芙美子 「雨」
...今この黄昏(たそがれ)のなかでKが離れた場所から見て馭者(ぎょしゃ)だろうと想像したのだが...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「城」
...膿臭を浴びたことのなかつた私の神経は、昏乱し、悲鳴を発し、文字通りささらのやうになつてしまつたのである...
北條民雄 「柊の垣のうちから」
...早や黄昏(たそがれ)すぎて闇(くら)きころ...
宮崎湖処子 「空屋」
...「どうやら昏れてしまいました」やがてお石は窓のほうへふり返った...
山本周五郎 「日本婦道記」
...つなの心は昏乱(こんらん)した...
山本周五郎 「風流太平記」
...あの観音像は幕府の眼を昏ますためのマリヤ像か...
横光利一 「旅愁」
...あらゆる物が彼等の頭で昏くなつてゐた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...お粂はやがて夜具の中の昏々(こんこん)たる夢の人を軽くゆすぶって...
吉川英治 「江戸三国志」
...われわれ昏睡におちいつてわからなくなり...
吉川英治 「折々の記」
...黄昏(たそが)れの陸へ上がって来る個々の彼らは...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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