...そして、日がな一日、塵程の屈托が無い様に、陽気に物を言ひ、元気に笑つて、誰に憚る事もなく、酒を呑んで、喧嘩をして、勝つて、手当り次第に女を弄んで、平然(けろり)としてゐた...
石川啄木 「刑余の叔父」
...わたしはそれから日がな一日櫃台(デスク)の内側でこの仕事だけを勤めていたので...
魯迅 井上紅梅訳 「孔乙己」
...日がな一日天幕(テント)を出たり入つたりして自然を娯むのだ...
薄田泣菫 「茶話」
...日がな一日ぼりぼりと微かな歯音をたてて...
薄田泣菫 「独楽園」
...例へば澤山な子持の青白い屑屋の女房は寒い吹き晒らしの日蔭の土間で家中にぶちまけられた襤褸やがらくたを日がな一日吟味し形付ける...
千家元麿 「自分は見た」
...コクトオは氣がちがひさうになつて日がな一日オピアムばかりやつてるさうだし...
太宰治 「ダス・ゲマイネ」
...私なぞも物心地が附いてからは、日がな一日、婆様の老松(おいまつ)やら浅間(あさま)やらの咽(むせ)び泣くような哀調のなかにうっとりしているときがままございました程で、世間様から隠居芸者とはやされ、婆様御自身もそれをお耳にしては美しくお笑いになって居られたようでございました...
太宰治 「葉」
...うしろ姿のおせん様というあだ名の、セル着たる二十五歳の一青年、日がな一日、部屋の隅、壁にむかってしょんぼり横坐りに居崩(いくず)れて坐って、だしぬけに私に頭を殴られても、僕はたった二十五歳だ、捨てろ、捨てろ、と低く呟(つぶや)きつづけるばかりで私の顔を見ようとさえせぬ故、こんどは私、めそめそするな、と叱って、力いっぱいうしろから抱いてやって激しくせきにむせかえったら、青年いささか得意げに、放せ、放せ、肺病がうつると軽蔑して、私は有難(ありがた)くて泣いてしまった...
太宰治 「HUMAN LOST」
...日がな一日陰気に欝(ふさ)ぎ込んでばかりいた私は...
近松秋江 「うつり香」
...床の間に日がな一日...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...厭やと思へば日がな一日ごろごろとして烟(けぶり)のやうに暮してゐまする...
樋口一葉 「十三夜」
...厭やと思へば日がな一日ごろ/\として烟のやうに暮して居まする...
樋口一葉 「十三夜」
......
三好達治 「駱駝の瘤にまたがつて」
...討論の進め方が秩序をもってなされるならば、日がな一日、心静かにわたしは反論するであろう...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...「なアみんな、俺たちも悪かったが、日がな一日、舟の中じゃ、何ぼ何でも飽々(あきあき)するじゃねえか...
吉川英治 「私本太平記」
...でもここなら幾ら日がな一日...
蘭郁二郎 「腐った蜉蝣」
...のこる彼女は日がな一日ぽつねんとして...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
...カテリーナ・リヴォーヴナは来る日も来る日も日がな一日...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
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