...そして、日がな一日、塵程の屈托が無い様に、陽気に物を言ひ、元気に笑つて、誰に憚る事もなく、酒を呑んで、喧嘩をして、勝つて、手当り次第に女を弄んで、平然(けろり)としてゐた...
石川啄木 「刑余の叔父」
...わたしはそれから日がな一日櫃台(デスク)の内側でこの仕事だけを勤めていたので...
魯迅 井上紅梅訳 「孔乙己」
...日がな一日青表紙に囓(かじ)りついてゐた...
薄田泣菫 「茶話」
...例へば澤山な子持の青白い屑屋の女房は寒い吹き晒らしの日蔭の土間で家中にぶちまけられた襤褸やがらくたを日がな一日吟味し形付ける...
千家元麿 「自分は見た」
...何を好んでこの狭小の家に日がな一日...
太宰治 「創生記」
...私達は日がな一日骨牌(カルタ)やチェスをして過し...
谷崎潤一郎 「細雪」
...来る日も来る日もアンとカルヴァートは二人で庭の木々の下に腰を下ろして日がな一日を過ごしていました...
O. H. ダンバー O. H. Dunbar The Creative CAT 訳 「長い部屋」
...日がな一日陰気に欝(ふさ)ぎ込んでばかりいた私は...
近松秋江 「うつり香」
...床の間に日がな一日...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...厭やと思へば日がな一日ごろ/\として烟のやうに暮して居まする...
樋口一葉 「十三夜」
...日がな一日セットの中で暮した...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...ヤトラカン・サミ博士は、おそらくは英吉利旦那(イギリスマスター)の着古しであろうぼろぼろのシャツの裾(すそ)を格子縞(こうしじま)の腰巻(サアロン)の上へ垂らして、あたまを髷(シイニョン)に結い上げて、板きれへ革緒(かわお)をすげた印度(インド)履き物を素足(すあし)で踏んで、例の移動椅子(いす)に腰かけて、それを小舟のように漕(こ)いで、そうして、胸のところへ、首から、手垢(てあか)で汚れた厚紙(ぼうるがみ)の広告をぶら下げて、日がな一日、毎日毎日このマカラム街を中心に、このへん一帯の旅客区域の舗道を熱帯性の陽線に調子を合わして、ゆっくりゆっくりと運転し歩いていた...
牧逸馬 「ヤトラカン・サミ博士の椅子」
......
三好達治 「駱駝の瘤にまたがつて」
...討論の進め方が秩序をもってなされるならば、日がな一日、心静かにわたしは反論するであろう...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...「なアみんな、俺たちも悪かったが、日がな一日、舟の中じゃ、何ぼ何でも飽々(あきあき)するじゃねえか...
吉川英治 「私本太平記」
...でもここなら幾ら日がな一日...
蘭郁二郎 「腐った蜉蝣」
...幸か不幸か別にその日その日には困らなかったので日がな一日この不思議な世界に浸り切っていたのです...
蘭郁二郎 「歪んだ夢」
...のこる彼女は日がな一日ぽつねんとして...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
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