...公用文箱にいれて鍵をかけてあります...
リチャード・オースティン・フリーマン Richard Austin Freeman 妹尾韶夫訳 「予謀殺人」
...几帳だの、かさね衣だの、廊下だの、蒔繪の文箱だの、花の枝につけた消息だの、口で言ふべきところを懷紙に書いてそれを厨子の上に置いたりする生活だの――さういふものに曾ては深くあこがれてそしてその野山を見捨てゝはるばる出かけて來たのであるけれども、今では却つてそこに戻つて行く藤母子がたまらなく羨しいのであつた...
田山花袋 「道綱の母」
...暫くして出來た返事をもとの文箱に入れてそのまゝ呉葉にもたせてやつた...
田山花袋 「道綱の母」
...この程度に薄めて、この裏へ通信の文字を認(したた)めるんです、そうしてこうクルクルと捲いて、鳩の風切羽(かぜきりば)か、足のところへそっと結びつけるのですな、そうすれば、紙と違って、雨に逢っても、まず大丈夫だろうと思うんです」「可愛らしい文箱ですね」「お使者が可愛らしいから、文箱もそれに準じてね」「ですけれども、これでは字を認めるところが、あんまり狭いではありませんか」「その辺が精一杯ですよ、それより広くした日には、使者に持ちきれません」「これでは、三十六文字ぐらいしか書けませんのね」「眼鏡をかけて書けば、百字は書けますよ」「でも、せっかくのたよりに百字ぐらいでは、何にも、言いたいことが言えないじゃありませんか」「それはお雪ちゃんのような、文章家には、ずいぶん不足でもありましょうが、きんきゅうの用事ですと、百字書ければ大抵の要領は書けますからね」「ねえ、北原さん」お雪は何と思ったか、腰を落着けるようにして、籠の中の鳩を見ながら賢次の方にすりよって――「北原さん、今わたしも思いついてよ、この鳩と、その文箱を、わたしにも貸して下さらない?」「ええ、お貸し申しますとも、これだけあるのですからお望み次第です」「どうぞお貸し下さい、わたしは、この鳩に頼んで上野原まで使に行ってもらいましょう、それともう一箇所は房州まで……」「そいつはいけません、鳩というやつは、よく使をするにはしますけれども、無条件でどこへでも行くというわけにはいかないのです、ある特定の場所のほかへは、自由に使命を果しに行く能力がありません、そこが畜生の悲しさですね」「でも人間と違って、羽で行くんですから、どこへでも行けそうなものですのにねえ」「それが実際そうはいかないので、この籠の分は飛騨(ひだ)の平湯行、こちらのは信州の松本行、それから、これが尾張名古屋、三カ所に限ったものです...
中里介山 「大菩薩峠」
...文箱(ふばこ)がありません...
中里介山 「大菩薩峠」
...宅の蔵から高蒔絵(たかまきえ)の緋(ひ)の房(ふさ)の付いた美しい文箱(ふばこ)を取り出して来た事も...
夏目漱石 「硝子戸の中」
...文箱は念入りに檢(しら)べたらうな」「見ましたとも」「塗(ぬり)か紐(ひも)に汚れはなかつたかい...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...御墨付を文箱(ふばこ)に納めて持ち帰らせましたが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...それさえあれば」落散る文箱を取って差出すと...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...自分は御墨付の入った文箱を後生大事に...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...文箱はどうなりました」「持っていた――が...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...かねて用意した文箱を摩り替えたろう...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...文箱の泥を丁寧に拭き取り...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...もとの通り文箱の高紐を結んで返しながら...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「いつも文箱(ふばこ)の上に載っているあの文鎮を貸して頂きたいのです」と云った...
山本周五郎 「日本婦道記」
...文箱(ふばこ)を三つ持って戻った...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...文箱の打紐を解き...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...采女は文箱を元のように直して...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
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