...こっそり赤い文箱に仕舞い込みました...
太宰治 「虚構の春」
...几帳だの、かさね衣だの、廊下だの、蒔繪の文箱だの、花の枝につけた消息だの、口で言ふべきところを懷紙に書いてそれを厨子の上に置いたりする生活だの――さういふものに曾ては深くあこがれてそしてその野山を見捨てゝはるばる出かけて來たのであるけれども、今では却つてそこに戻つて行く藤母子がたまらなく羨しいのであつた...
田山花袋 「道綱の母」
...いや、手ずさみではありません、これからは一世一代の発明として、実用に供してみようという準備の細工なんですが」「まあ、鳩をみんなお出しになって、並べてしまいましたね」「ええ、その鳩のために、この白樺の皮の工夫があるのです」「何になさいます」「まあ、おすわりなさい、少しぐらいいいでしょう、ほんとに暫くでしたから、まあお話ししていらっしゃい、お茶をいれて、蕎麦饅頭(そばまんじゅう)を御馳走します」「どうぞ、おかまい下さいますな」「まあ、お話しなさい、それに、この大発明について、あなたのお知恵も拝借したいと思っていたところですから」「わたしに知恵なんてございませんが、当ててみましょうか」「当てて御覧なさい」「この鳩に持たせる軽い文箱(ふばこ)を、その白樺の皮でこしらえようとして、苦心していらっしゃるのでしょう」「図星(ずぼし)!」賢次は、わが意を得たりとばかり喜んで、「お雪ちゃんの頭のいいことは、今に始まったことじゃないが、全く恐れ入ったものです、それに違いないのです、よくそこまで想像が届きましたね」「なに、頭のいいこともなにもあるものですか、あなたはこのごろ、しょっちゅう、そうおっしゃってじゃありませんか、この三つの籠(かご)のうち、一つは飛騨(ひだ)の平湯行、一つは信州の松本行、一つは尾張の名古屋行だが、これに持たせてやる文箱(ふばこ)が無い、文箱が無くては、鏡山のお初でさえ困るだろうから、ひとつこの鳩に持たせる文箱を工夫してやりたいなんぞと、口癖のようにおっしゃっていらっしゃったではありませんか」「そうでしたかね、そんなことを口走りましたかね、あんまりのぼせていたものですから、自分では気がつきませんでした」「そうして、御工夫がつきましたの、その発明とやらが成就(じょうじゅ)なさいましたの」「成就はしませんが、目鼻は明いたようなものです、御覧なさい……」北原賢次は、薄目になめした皮で、小さな目籠のようなものを仕立てたのを、取り上げてお雪の目の前に出し、「これなら、この平和の使に持たせてやっても荷にはなりますまい...
中里介山 「大菩薩峠」
...御墨附を文箱に納めて持ち歸らせましたが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...文箱を捧げ加減に...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...さて出かけようとして次の間の机の上に置いた文箱を取り上げて驚きました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...文箱は何うなりました」「持つて居た――が...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...文箱は念入りに檢(しら)べたらうな」「見ましたとも」「塗(ぬり)か紐(ひも)に汚れはなかつたかい...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...御墨付を文箱(ふばこ)に納めて持ち帰らせましたが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...文箱を捧げ加減に...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...田舎(いなか)へ帰すことになっていますぜ」「なるほど」「文箱をちょっとの間見張っていたのは...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...今朝殺されたお蔦という娘の文箱から出て来た...
久生十蘭 「平賀源内捕物帳」
...○=門前文箱持って走り出た侍...
山中貞雄 「なりひら小僧」
...「いつも文箱(ふばこ)の上に載っているあの文鎮を貸して頂きたいのです」と云った...
山本周五郎 「日本婦道記」
...文箱の打紐を解き...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...彼の差出す文箱を受取ると...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...文箱(ふばこ)はあるかね』『すみませんな...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...うやうやしく文箱(ふばこ)をさしおいた...
吉川英治 「宮本武蔵」
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