...と申しますのは、五月二十五日のこと、夜(よ)更けて治部少輔殿のお邸へ、何者とも知れず文箱(ふばこ)を持参いたして参り、聚楽より参った者でござりますが、これから浅野弾正殿のお邸へ伺わなければなりませぬ、急ぎますから帰りに御返事を戴きますと云い残して、帰った者がござりますので、番所の者がそれを殿へ差し上げますと、文箱の上に、石田治部殿まいると書いて、誰とも名を記してござりませなんだ...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...貝の蒔繪の文箱の中に重ねて藏つて置いた...
田山花袋 「道綱の母」
...それが呉葉の持つて行つた文箱を受取つた...
田山花袋 「道綱の母」
...几帳だの、かさね衣だの、廊下だの、蒔繪の文箱だの、花の枝につけた消息だの、口で言ふべきところを懷紙に書いてそれを厨子の上に置いたりする生活だの――さういふものに曾ては深くあこがれてそしてその野山を見捨てゝはるばる出かけて來たのであるけれども、今では却つてそこに戻つて行く藤母子がたまらなく羨しいのであつた...
田山花袋 「道綱の母」
...返事を書いてそれをその文箱の中に入れた...
田山花袋 「道綱の母」
...いくらか氣になつてまた追かけて文箱を持たせてやつた...
田山花袋 「道綱の母」
...御墨附を文箱に納めて持ち歸らせましたが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...暫らく文箱を隣室に置きつ放しにしたことなどがはつきり思ひ出されます...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...文箱は念入りに檢(しら)べたらうな」「見ましたとも」「塗(ぬり)か紐(ひも)に汚れはなかつたかい...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...黒塗金蒔繪(くろぬりきんまきゑ)の立派な文箱...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...文箱はどうなりました」「持っていた――が...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...御墨付の文箱を摩(す)り替えるつもりだったろう...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...文箱の泥を丁寧に拭き取り...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...文箱(ふばこ)などのたぐいであります...
柳宗悦 「手仕事の日本」
...「まず御書面をごらん下さい」甲斐は文箱を取ってあけた...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...蒔絵の文箱を持った奥女中が矢立に帯を結び...
横光利一 「旅愁」
...作法振った文箱の返し方に...
吉川英治 「宮本武蔵」
...文箱のふたを開き...
吉川英治 「宮本武蔵」
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