...彼れは擅まに自然を切断する...
有島武郎 「描かれた花」
...物の饐(す)えた香と積肥(つみごえ)の香が擅(ほしいまま)にただよっていた...
有島武郎 「カインの末裔」
...歡樂を擅にする事ができるのだから...
泉鏡花 「お花見雜感」
...必らずしも哲学研究の擅場とするにも及ぶまい...
市島春城 「読書八境」
...英訳本と対照するにやはり擅(ほしいまま)に原文を抜いたり変えたりした箇処は少しもなかった...
内田魯庵 「二葉亭四迷の一生」
...馬に跨って侵略を擅(ほしいまま)にする時にはほとんど猛火の原野を焼く如き勢いである...
大隈重信 「東亜の平和を論ず」
...ぼくは今夜は正(まさ)に自分の独擅場(どくせんじょう)だなと得意な気がして...
田中英光 「オリンポスの果実」
...特に社会科学に於てその総合乃至折衷の才を擅(ほしいまま)にした彼は...
戸坂潤 「辞典」
...(一九三六)23書物六題一 書物の私的擅有かつて...
戸坂潤 「世界の一環としての日本」
...是れ豈福澤翁をして獨り其の美を教育界に擅まにせしめざる儼然たる大事實に非ずや...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...獨り我輩の怪む所は一百餘の代議士を有する大政黨が斯くの如き醜怪なる人物をして擅まに其黨規を紊亂せしめて憂へざること是れなり...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...さすがの白雲をして、せっかくの朗吟を中止沈黙のやむなきに至らしめた無作法者の、清澄の茂坊であること申すまでもなく、白雲をして、中止沈黙のやむなきに至らしめたことをいいことにして、茂太郎がいよいよ独擅(どくせん)を発揮し、独擅といっても、元はといえば、内容節調みな白雲先生の直伝(じきでん)によるところのものに相違ないが――海上の明月、潮(うしほ)と共に生ずゑんゑんとして波に随ふ千万里何(いづ)れの処か春江月明なからん江流ゑんてんとして芳(はう)てんをめぐる月は花林を照して皆霰(あられ)に似たり空裏の流霜飛ぶことを覚えず汀上(ていじやう)の白沙見れども見えず江天一色繊塵なし皓々(かうかう)たり空中孤月輪江畔何人(なんぴと)か初めて月を見し江月いづれの年か初めて人を照せし人生代々窮まりやむことなく江月年々望み相似たり知らず江月何人(なんぴと)をか照すただ見る長江の流水を送ることを白雲一片去つて悠々青楓浦上愁ひに勝(た)へず誰(た)が家ぞ今夜扁舟(へんしう)の子は何れの処ぞ相思ふ明月の楼憐れむべし楼上月(つき)徘徊(はいくわい)すまさに離人の粧鏡台を照すべし玉戸簾中まけども去らず擣衣砧上(たういちんじやう)払へどもまた来(きた)る此時(このとき)相望めども相聞えず願はくば月華を逐(お)うて流れて君を照さん鴻雁(こうがん)長く飛んで光わたらず魚竜潜(ひそ)み躍(をど)りて水文(あや)をなす昨夜かんたん落花を夢む憐れむべし春半(しゆんぱん)家に還らず江水春を流して去つて尽きんと欲す江潭落月(かうたんらくげつ)また西に斜めなり斜月沈々として海霧(かいむ)に蔵(かく)る碣石瀟湘(けつせきせうしやう)限り無きの路知らず月に乗じて幾人か帰る落月情を揺(うご)かして江樹に満つこれだけの詩を一句も余さず、清澄の茂太郎が、吟じ来り吟じ尽してしまったものですから、今度は、天地が動き出したほどに玉蕉女史が驚かされてしまいました...
中里介山 「大菩薩峠」
...しきりに暴威を擅(ほしいまま)にしている...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...時には自国の者が徒党を組んで同胞から掠奪を擅(ほしいまま)にすることさへあつたのぢや...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...暗黒から暗黒へと露地横町(ろじよこちょう)を縫ってその跳躍を擅(ほしいまま)にした...
牧逸馬 「女肉を料理する男」
...ですがこの友禅はその名を独り擅(ほしいまま)にするわけにゆかないのです...
柳宗悦 「民藝四十年」
...君主擅制(せんせい)の時代には堯舜(げうしゆん)は歌はれざるべからず...
山路愛山 「詩人論」
...その間に動いてゐる氣宇の爽大さはいよ/\背後の富士をして獨りその高さを擅(ほしいまま)ならしめてゐるのである...
若山牧水 「樹木とその葉」
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