...あの手負いが、今まで人に気づかれぬはずはありませんから、その噂が耳ざとい女中達に伝(つたわ)っていないとすると、昨夜の事は、いよいよ一場(いちじょう)の悪夢に過ぎなかったのかも知れません...
江戸川乱歩 「湖畔亭事件」
...手負いの意地の悪いのと同じ事だわ...
ストリンドベルヒ August Strindberg 森鴎外訳 「一人舞台」
...幾人かの瀕死の手負いを出した...
リットン・ストレチー Lytton Strachey 片岡鉄兵訳 「エリザベスとエセックス」
...なかの内臓は黒い戦士のあぎとに暴露されていた――その方の胸板はあまりに厚くてどうにも喰いやぶるすべがないらしかった――そして手負いの彼の眼の暗紅のザクロ石は戦いのみが燃やすことのできる兇暴さに燃えているのが見られた...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...しかも眼もくれずに手負い猪のようになって飛び込んだ控えの間へ通ずる扉には...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...そしてもう一つは私を信頼していてくれるあの少年太子がさぞ味気ない日々を送っていられるであろうと思うことが私の心を手負いの猪(しし)のように...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...慈悲深くも手負いの男を介抱しているではないか...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「ボヘミアの醜聞」
...「しっかりしてくれ、お通さん、傷は浅い」「いえ、私はどうせ助ろうとは思わない――父さんにたったひと目逢いたいけれど」「尤もだが、――」お通の右の眼に浮ぶ涙を見ると、身を切られるようですが、この手負いを、御前平まで人目を忍んで運ぶ工夫はありません...
野村胡堂 「天保の飛行術」
...あれを聴け」芳年は血に狂う手負いのおよつを辛くも抱き止めて...
野村胡堂 「芳年写生帖」
...慟哭する孝助を叱って手負いの主人は養子先の相川家へ逃がしてやる...
正岡容 「我が圓朝研究」
...仙太 (手負いの体をもがきながら、刀を抜いて二人を防ぎつつ狂ったように叫ぶ)畜生っ! ひ、ひ、人をだましやがって! き、貴様それでも男かっ! それでも士かっ! い、いいや、そ、それが士だ! だましたな! だましたな! 犬畜生っ! い、い、命が惜しいと、だ、だ、誰が言ったんだ! そ、それを、い、い、今さら、だましやがって! き、貴様達士なんぞ、人間じゃねえ、に、人間じゃねえ!水木 黙れ! 黙らぬか! 加多っ!(抜刀、斬り下ろす)加多 (これも抜刀するが、斬り下ろしかねながら)仙太、どうか死んでくれ!仙太 (刀を振廻すが、手負いのため、相手には届かぬ、喚く)し、し、死んでくれと? 畜生! 死にたくねえと誰が言ったっ! 皆で一緒にと、あれほど言った、うぬ等の舌の根がまだ乾かねえのに! い、い、い、や、こんな、こんな、こんな目に会っては、死に、たくねえ...
三好十郎 「天狗外伝 斬られの仙太」
...「手負いだな...
山本周五郎 「夜明けの辻」
...「手負いの獣は危険だぞ...
山本周五郎 「夜明けの辻」
...身をひるがえせば梢斬り! 見る間に血は河となり修羅にのた打つ手負いの数...
吉川英治 「剣難女難」
...味方の手負いと討死は...
吉川英治 「三国志」
...これも手負い猪(じし)となった藤五が...
吉川英治 「私本太平記」
...うごけない手負いか死者のほかはない寂(せき)とした死谷(しこく)の闇に...
吉川英治 「私本太平記」
...いかに、十倍の兵力と、弓勢をつらねても、この烈風が味方しない以上、秀郷、貞盛の連合軍も、いたずらに矢を費い、手負いや死者を、積むだけであった...
吉川英治 「平の将門」
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