...今、この白樺の幹の蔭に、雀(すずめ)を狙う黒い猫みたいに全身緊張させて構えている男の心境も、所詮は、初老の甘ったるい割り切れない「恋情」と、身中の虫、芸術家としての「虚栄」との葛藤である、と私には考えられるのであります...
太宰治 「女の決闘」
...私がそれを言つたところで、所詮は、一夜勉強の恥づかしい軽薄の鍍金(めつき)である...
太宰治 「津軽」
...所詮は、ただうれしいのである...
太宰治 「如是我聞」
...所詮は、物質が燃え上るだけのことに違いないのだけれど、火事は、なんだか非科学的だ...
太宰治 「春の盗賊」
...所詮は自分を知ることである...
種田山頭火 「草木塔」
...所詮は夢のことだから...
豊島与志雄 「復讐」
...所詮は寢床の中に終るのだ...
フランツ・カフカ 中島敦訳 「罪・苦痛・希望・及び眞實の道についての考察」
...心理学も認識論も未だ押寄せて来ない此の離れ島のツシタラにとっては、リアリズムの、ロマンティシズムのと、所詮は、技巧上の問題としか思えぬ...
中島敦 「光と風と夢」
...あの山をみるのも所詮は同じ...
中原中也 「雲」
...所詮はくたばれア...
中原中也 「散歩生活」
...所詮は敗北の憂目(うきめ)を見るにきまっている」モーナルーダオはそれを聞くと答えた...
中村地平 「霧の蕃社」
...所詮は人間のために...
萩原朔太郎 「老年と人生」
...所詮は底ぬけに小心者で...
林芙美子 「摩周湖紀行」
...所詮は定義上の問題に落ちつくのだろうが...
原口統三 「二十歳のエチュード」
...この眼が醒めてくれなかったら!所詮は愚痴だ...
原口統三 「二十歳のエチュード」
...書かぬとか力んだところで所詮は心胆の問題で...
牧野信一 「浪曼的月評」
...所詮は仕出しにやゝ優る役を振られるくらゐのことであつたらうが...
正岡容 「異版 浅草燈籠」
...」と、シベリヤの広さに驚歎したのを矢代は思い、十日余りも続くあの地の真白な世界を想像してみて、その途方もなく巨大な白い塊の中に生活して来たロシア人の表情も、所詮は、我れ識らずに退屈と戦って来た長い苦しさかも知れぬと思ったりした...
横光利一 「旅愁」
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