...出懸ける譯にもいかず...
石川啄木 「鳥影」
...ふと例の煙草屋の金歯の亭主が、箱火鉢を前に、胸を反らせて、煙管(きせる)を逆に吹口でぴたり戸外(おもて)を指して、ニヤリと笑ったのが目に附くと同時に、四五人店前(みせさき)を塞いだ書生が、こなたを見向いて、八の字が崩れ、九の字が分れたかと一同に立騒いで、よう、と声を懸ける、万歳、と云う、叱(しっ)、と圧(おさ)えた者がある...
泉鏡花 「婦系図」
...すぐに出懸けるからと前提して...
海野十三 「暗号数字」
...半次を公判に懸ける準備に急いだのだった...
海野十三 「棺桶の花嫁」
...懸けると長話の癖を出して...
谷崎潤一郎 「細雪」
...彼女はいったい身嗜(みだしな)みに金を懸ける方であったのに...
谷崎潤一郎 「細雪」
...路の傍に田舎(ゐなか)には何処にも見懸ける不潔な肥料溜(こやしだめ)があつて...
田山花袋 「重右衛門の最後」
...先生に御心配を懸けるのは...
田山花袋 「蒲団」
...即ち敵を殺して其の死骸を懸ける樹に不自由はなからう...
テニソン Tennyson 菅野徳助、奈倉次郎訳 「アーサー王物語」
...帆も懸けることは懸けるが...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...波が其巌を越えてざらりと白い糸を懸ける...
長塚節 「隣室の客」
...暗い座敷へ懸けると...
夏目漱石 「永日小品」
...其の家は、――判乎(はっきり)記憶には在りませんが、其の貧相な路次の中では異彩を放つ粋な小造りの二階家で、男が硝子格子に口を押し付ける程近寄せて、今晩は、と声を懸けると、内部からはいと答える四十女らしい者の婀娜(あだ)めいた声が聞えて来、夫迄消えていた軒灯にぽっと灯が這入りまして、私達の立って居る所が薄茫乎(うすぼんやり)と明るくなりました...
西尾正 「陳情書」
...あたしをペテンに懸けるのあ...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...些(ちっ)たア聞くかも知れないから」トお政は又もお勢を尻目に懸ける...
二葉亭四迷 「浮雲」
...よう御座んすよ」「だッて実際の事ですもの」「オホホホ直ぐ復讐(ふくしゅう)して」「真(しん)に戯談(じょうだん)は除(の)けて……」ト言懸ける折しも...
二葉亭四迷 「浮雲」
...つぎ竿の先で梯子の一端を「幸福を宿す木」が私達のために緑の葉を拡げてゐる――樅の枝に辛うじて懸けることが出来た...
牧野信一 「寄生木と縄梯子」
...これをオイカケというは緒を懸ける義で...
南方熊楠 「十二支考」
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