...もう自分で自分の心根(こころね)を憫然(びんぜん)に思ってそぞろに涙を流して...
有島武郎 「或る女」
...憫然というやつかい...
泉鏡花 「薄紅梅」
...てもまア憫然(あさま)しい魚類(ぎょるゐ)とはなられたな! こりゃ最早(もう)ペトラークが得意(とくい)の戀歌(こひか)をお手(て)の物(もの)ともござらう...
シェークスピヤ William Shakespeare 坪内逍遙訳 「ロミオとヂュリエット」
...元來が自然の成行きにすぎないんですよ! といった哀れ憫然たる男なんですから...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...はたから見ると憫然なものだ...
夏目漱石 「鈴木三重吉宛書簡―明治三十九年」
...何だろうがおれに頭をさげねばならんと思うのは憫然(びんぜん)のしだいで...
夏目漱石 「野分」
...こんな生活状態に甘んじて一生を送る兄夫婦がいかにも憫然(ふびん)に見えた...
夏目漱石 「門」
...己(おの)れにさえ憫然(びんぜん)な姿を描(えが)いた...
夏目漱石 「門」
...己(おの)れにさへ憫然(びんぜん)な姿(すがた)を描(ゑが)いた...
夏目漱石 「門」
...可憐なる彼ら――可憐は取消そう二人とも可憐という柄(がら)ではない――エー不憫(ふびん)なる――憫然なる彼らはあくまでも困難と奮戦しようという決心でついに下宿を開業した...
夏目漱石 「倫敦消息」
...憫然(びんぜん)なる主人の夢を驚破(きょうは)するのを天職のごとく心得ている連中だから...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...ガリヴァの歌必死で逃げてゆくガリヴァにとつて巨大な雲は真紅に灼けただれその雲の裂け目より屍体はパラパラと転がり墜つ轟然と憫然と宇宙は沈黙すされど後より後より追まくつてくるヤーフどもの哄笑と脅迫の爪いかなればかくも生の恥辱に耐へて生きながらへん と叫ばんとすれどその声は馬のいななきとなりて悶絶す家なき子のクリスマス主よ...
原民喜 「魔のひととき」
...あえてその誤りを覚らないのは憫然(びんぜん)の至りである...
牧野富太郎 「植物記」
...文士くづれの落語家として出演してゐた時代の落莫たる己の姿をあはれ憫然なりしものよと云つた風な感情を以ておもひ泛べないわけには行かない...
正岡容 「滝野川貧寒」
...アワレ憫然の至り...
宮武外骨 「一円本流行の害毒と其裏面談」
...無帽でバス待っているところを眺めたら憫然を感じました...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...憫然至極救いがたいものね...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...私が家中の総大将という憫然なことになってしまって...
宮本百合子 「獄中への手紙」
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