...強烈な光を投げて憚りもなく照らした...
石川啄木 「二筋の血」
...憚りながら未だ南京米を口に入れた事の無いお兄(あに)いさんだ...
内田魯庵 「犬物語」
...さすがに男も友人の手前を憚りてや...
大町桂月 「月の東京灣」
...人は漸く其の動物の本性を暴露するを憚り...
高山樗牛 「美的生活を論ず」
...憚りながら左衛門尉...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...さればと申して、此の城に籠り給うとも、長くは支えきれませぬ、遠巻きにして兵粮攻(ひょうろうぜ)めにでもされたなら、味方の兵共は親類縁者を頼って降参し、止まる者はほんの僅かに過ぎないでござろう、憚りながら、君の御為(た)めを思えばこそ隠さず申し上げるのでござる、我等を措(お)いて誰が斯様なことを正直に申し上げようぞ、そこの道理がお分りになったら、今は躊躇(ちゅうちょ)する場合でござらぬ、とく/\お参りあって然るびょう存じ申すと云うのであった...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...斯(こ)う見えても憚りながら文字の社会では些(ちっと)は名を知られた男だ...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...遂に躊躇して手を下だすを憚りたるは首相たるの威嚴を失墜したるものに非ずして何ぞや更に地方議員選擧干渉に就て之れを見るも閣下は斷じて此の事實を認めずといふを得ざるものたるに拘らず...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...月の最終の日だということに妙な憚りを置いて...
豊島与志雄 「反抗」
...下男の身分で憚りもなく...
豊島与志雄 「碑文」
...「六年と申せば、短いようで長い――お嬢様が、十二三から、こんなに御成長遊ばしますまで、ええ、その長い間、何うか、よいところへ御縁のきまるを見てと、それを楽しみに――何も、今更になって、手当だの、暇だのと、それは一期、半期の奉公人のことで、手前は、憚りながら、坊ちゃんに、剣術を教えて頂きますのも、こんな時に、又蔵、こうこうこういう訳だが、どう思う、と、旦那様、一言ぐらい仰しゃって下さっても――」又蔵の涙声が、だんだん顫えて来た...
直木三十五 「南国太平記」
...家業は巾着切でも、小藤次なんかたあ、憚りながら、人間の出来がちがうんだ)庄吉は、三田の薩摩屋敷の方へ、歩くともなく歩いて行った...
直木三十五 「南国太平記」
...それに、憚りながら、この兄さんは足が少々達者でしてね、飛騨の高山であろうと、越中の富山であろうと、ほんの少々の馬力で、御用をつとめますから、その方もまあ御安心くださいまし」「いったい、高山のどこへ預けて来たんですよ」「こうなっちゃ、すっかり白状してしまいますが、あの宮川通りの芸妓屋(げいしゃや)、和泉屋の福松という女のところへ、確かに三百両預けて参りました」「あの福松に――憎らしい」お蘭どのは、どうした勘違いか、がんりきの膝をいやッというほどつねり上げたから、「あ痛! 何をしやがる」と、百の野郎が飛び上ったのは当然です...
中里介山 「大菩薩峠」
...憚りながらうるさくからみつくのを振りきって...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何の憚りはせぬぞや...
樋口一葉 「花ごもり」
...只今のお言葉のうちに、わたくしがじぶんで鮨売になって市中を徘徊したという条(くだり)がございましたが、憚りながら、それは役者というものをご存じのないおかんがえ、小鰭の鮨売の型をとるためなら決して、じぶんで鮨売などにはなりません...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...憚りながらあたしだけは決してそんな真似はしませんからね...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...辺先生に業を求めんとするに人間が我を懼(おそ)るるを憚り...
南方熊楠 「十二支考」
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