...「憚りながら的矢の貫一...
海野十三 「奇賊悲願」
...さればと申して、此の城に籠り給うとも、長くは支えきれませぬ、遠巻きにして兵粮攻(ひょうろうぜ)めにでもされたなら、味方の兵共は親類縁者を頼って降参し、止まる者はほんの僅かに過ぎないでござろう、憚りながら、君の御為(た)めを思えばこそ隠さず申し上げるのでござる、我等を措(お)いて誰が斯様なことを正直に申し上げようぞ、そこの道理がお分りになったら、今は躊躇(ちゅうちょ)する場合でござらぬ、とく/\お参りあって然るびょう存じ申すと云うのであった...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...あたりのテーブルを憚りながら...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「決闘」
...又權勢の大なるに其目曳かれて憚りて劣れる者を取る勿れ』しかいふ彼は金髮のメネラオスのため憂ふ...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...幕府へは憚りあつたのであらう...
徳永直 「光をかかぐる人々」
...憚りながら五十銭もする米の飯を食っているんだ!」「よせよ...
豊島与志雄 「掠奪せられたる男」
...「源さん、憚りさま、お湯を一つ」「へいへい、一つと仰しゃらず、二つお揃いで、持参致します...
直木三十五 「南国太平記」
...そこに、道有り、作法有り、不義は御家の法度(はっと)とやら、万一そういうことがしったい致しました時には、憚りながら、ぽんぽんながら、この良庵が捨ておきませぬ...
直木三十五 「南国太平記」
...それに、憚りながら、この兄さんは足が少々達者でしてね、飛騨の高山であろうと、越中の富山であろうと、ほんの少々の馬力で、御用をつとめますから、その方もまあ御安心くださいまし」「いったい、高山のどこへ預けて来たんですよ」「こうなっちゃ、すっかり白状してしまいますが、あの宮川通りの芸妓屋(げいしゃや)、和泉屋の福松という女のところへ、確かに三百両預けて参りました」「あの福松に――憎らしい」お蘭どのは、どうした勘違いか、がんりきの膝をいやッというほどつねり上げたから、「あ痛! 何をしやがる」と、百の野郎が飛び上ったのは当然です...
中里介山 「大菩薩峠」
...肩を並べ伏眼加減に人眼を憚りつつ足早やに歩み去る二人の跡を...
西尾正 「陳情書」
...「憚りながら金に糸目は付けねエ――」とやるところでしたが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...憚りながらうるさくからみつくのを振りきって...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...憚りあればにや音信((おとづれ))もなく...
樋口一葉 「雪の日」
...只今のお言葉のうちに、わたくしがじぶんで鮨売になって市中を徘徊したという条(くだり)がございましたが、憚りながら、それは役者というものをご存じのないおかんがえ、小鰭の鮨売の型をとるためなら決して、じぶんで鮨売などにはなりません...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...嫉妬云々の俗評を憚りて萎縮するが如き婦人畢生の恥辱と言う可し...
福沢諭吉 「新女大学」
...そして、憚りなく云へば、ロチスターさまはあなたがお氣に召していらつしやるのですよ...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...憚りながらこれでも辻駕を担いでまっとうに食ってるんだから...
山本周五郎 「長屋天一坊」
...こっそりあたりを憚りながら...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
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