...私はよくこの苦々しい悒鬱を知っている...
有島武郎 「惜みなく愛は奪う」
...悒鬱な氣分が靜かにおごそかに彼れを壓倒しようと試みるらしかつた...
有島武郎 「幻想」
...雨などが降りくらして悒鬱(ゆううつ)な気分が家の中に漲(みなぎ)る日などに...
有島武郎 「小さき者へ」
...その時私は彼の顔にちらりと悒鬱(いふうつ)な色が漲つたやうに思つた...
有島武郎 「骨」
...くすんだ悒鬱である...
飯田蛇笏 「薄暮の貌」
...私の妙に陰惨な悒鬱の感情は...
飯田蛇笏 「薄暮の貌」
...日毎夜毎(ひごとよごと)の悒鬱を払うには丁度(ちょうど)いい機会だと思ったので...
海野十三 「什器破壊業事件」
...悒(いぶせ)きに忍(あ)へじ二」と思ひて...
稗田の阿礼、太の安万侶 「古事記」
...田圃の中につゞいてゐる悒せき田舍家の間を縫うて俥に搖られながらゆくと...
近松秋江 「初雪」
...手狭な悒鬱(うっとう)しい彼の六畳の書斎にはとてもそぐわない雰囲気(ふんいき)であった...
徳田秋声 「仮装人物」
...悒然とした面持でじぶんの部屋の扉の前に帰りついた...
久生十蘭 「墓地展望亭」
...倍増の悒鬱に覆はれては大変だ――と私は要心したが...
牧野信一 「タンタレスの春」
...彼の表情はカラス天狗のやうに悒鬱で...
牧野信一 「病状」
...さういふ人心には悒せくも物悲しさをあぢははずにはゐられなかつた...
室生犀星 「故郷を辞す」
...悒(うっ)としい気がした...
室生犀星 「童子」
...しめれる土の上に悒(いぶ)せきかげの時うつりゆくごとに西へ震へて過ぎる...
室生犀星 「忘春詩集」
...はながさいてゐる目をつむつてぼくは見てゐるはなびらは色(いろ)をうしなひあを白くうなだれて……はななれば はなのやうになぜ笑はないのだらうはながさいてゐる目をそつとつむるといつでも黙つてさいてゐる背中をむけて 向ふを向いて悒鬱な花よ 匂ひのない――花ならば 花のやうに……...
森川義信 「悒鬱な花」
...あのじめじめとした悒鬱(ゆううつ)な梅雨が明けはなたれ...
蘭郁二郎 「鱗粉」
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