...物に怯えるような独言(ひとりごと)を聞いたのでございます」「どんなことです?」私は思わず急(せ)き込んだ...
大阪圭吉 「死の快走船」
...それに怯えるせいもある...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...申しわけなさそうな怯えたような顔で...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「決闘」
...お仕置きをしないでと怯えて泣きながら哀訴する子供に見られる...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「妻」
...なにか怯えた気持ちになる...
豊島与志雄 「悲しい誤解」
...それほど相手の雪子は物怯えがして居たのです...
野村胡堂 「踊る美人像」
...怯えたような低い声で...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...やがて内務大臣は怯えたような声で...
久生十蘭 「魔都」
...訳も無く苦しみ怯えている者も...
デイビッド・ヒューム David Hume 井上基志訳 「人間本性論(人性論)」
...怯えさせて呉れようか! 貴様たちやあ...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...辺りに怯えたもののように小さくなって打ち顫えていた...
細井和喜蔵 「モルモット」
...太郎は心底から怯えた悲鳴をあげてお葉の床へ飛び込んだ...
牧野信一 「サクラの花びら」
...彼女はほんとうに怯えたかのやうな悲鳴をあげて...
牧野信一 「タンタレスの春」
...怯えた泣声を挙げた...
牧野信一 「父の百ヶ日前後」
...ほんとに怯えやしないわよ...
W・W・ジェイコブズ 森郁夫訳 「井戸」
...(二九)だが川向うの家に反響する自分の咆哮(ほうこう)に怯えて...
山本周五郎 「青べか日記」
...その注意はむしろ七十郎自身がしなければならなかったものだろう、そう云おうとしたのだが、さすがに、それは死者への礼でないと思って、話をそらした、「――これまでにも、このことは幾たびとなく話しあって、どうしようもないということは、おまえにもよくわかっていると思うがね」「わかっていることと、絶えまのないこの心配とはべつですわ」とおくみは云った、「夜も昼も、怯えて、かたときも心の休まる暇のないこんなくらしには、あたしはもうとても耐えてゆくことはできません」「よくお聞き」甲斐はなだめるように云った、「おまえは私が闇討ちにされることを恐れている、つまり、私がいつ誰かに殺されるかもしれない、ということで怯えている、そうだね」「国老の職を辞任することはできる筈でしょう」とおくみが云った、「松山さまもいちど、御病気という理由で国老職を辞任なすったことがございます」「私の云うことを聞いてくれ」「いいえ、あたしの申上げることも聞いて下さい」おくみの顔は蒼白(あおじろ)く硬ばり、眼尻がつりあがっていた、「船岡にいらっしゃる帯刀(たてわき)さまはもう二十五におなりです、あなたが国老を辞任なさり、帯刀さまに跡目を譲って御隠居をなすっても、決して早すぎはしません、世間ではごくあたりまえのことではございませんか」「それは、そのとおりだ」「ではなぜ、そうして下さらないんですか」「もういちど訊くが、おまえが心配しているのは私の死ぬことだろう」甲斐は穏やかに微笑しながら云った、「私が誰かに殺されはしないか、という心配で怯えている、たしかに、そのおそれがないとは云わないが、人間は女とひとつ寝をしていて死ぬこともあるんだよ」「あなたはすぐそんなふうに」「いや」と甲斐は静かに首を振った、「これは冗談や軽口ではない、現にあることを云っているんだ、人の死にようはさまざまだ、壮健な若者がはやり病で急死することもあり、おそれ多いが天皇の御子(みこ)も将軍家の姫君も、天下の名医を集めながら平凡な病気で亡くなることがある、狂人の刃にかかる者もあるし、転んで頭を打っただけで死ぬ者もある、私はいちど闇討ちをかけられたが、けがもせずに助かった、もし私に寿命があるなら、幾たび闇討ちをかけられてもやすやすと死ぬことはあるまい、また、もし寿命の尽きるときが来たら、おくみの寝間で死ぬかもしれないだろう」「あなたはそういう方よ」とおくみは眼がしらを押えながら、力のない声で云った、「御自分がそのように割り切っているから、女の気持なんか察して下さろうともしないのでしょう、あなたはそういう薄情な方なんです」「そういうことにして、酒を貰おうかね」と甲斐は明るく云った、「死ぬことを気遣われるより、生きているうち大事にされるほうがいいからね」おくみが立ってゆくと、甲斐はなにを見るともなく、じっと空(くう)をみつめた...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...それは一寸恐わそうな怯えを帯んだ表情で...
横光利一 「旅愁」
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