...老桜月を帯びて霞の奧ふかき十二の欄干に、よりつくせる一人の少女の、鬢のほつれ毛を春風になぶらせて、払はむともせず、裂きたる玉章手にもちて、くれなゐの袖、やさしき口にかみしめたるまゝ、何を怨むか、続々として欄干の上に堕す涙の、月にかゞやきて、さながら真珠を散らすが如くなるに、よそめもいとゞ消えたき思ひすべし...
大町桂月 「月譜」
...怨むらくは唯少婢の珈琲を煮るに巧なるものなきを...
永井荷風 「偏奇館漫録」
...誠意を打ち割ってさえ呉れたなら斯ういう結果にはなるまいと怨むより外は無いが...
中里介山 「生前身後の事」
...何んの怨む筋もありません...
野村胡堂 「大江戸黄金狂」
...俺を怨むのはともかく...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...「駒次郎を怨む者は...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「主人を怨む者はなかったのか」平次は...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...公儀御用は勤めて居りますが、まことに物のわかつた主人で、町内でも評判でございました」「それほどの人でも、掛り人の多賀とかいふ人と仲たがひをしたではないか」「それはもう、怨む者の勝手で、――例へば下男の權三などは、遠縁の血のつながりを言ひ立てて、どうかすると主人に突つかゝつて居ります」「それはどういふ男だ」「主人の從弟(いとこ)の子ださうで、放埒(はうらつ)で勘當になり、親が亡くなつた時、殘つた身上と一緒に、大叔父に當る主人に預けられ、暫らく辛棒の具合を見るといふことで、下男同樣に使はれて居りますが、根がきかん氣の男で、時々主人に楯(たて)を突いて、持て餘して居ります」「その男は此處に居るだらうな」「庭の隅の物置――と申しても先々代の主人が隱居所に使つたところで、其處を一と間だけ片付けて住んで居ります...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...父親と先の女房も私を怨む筋は無いし」主人はそれ以上には物を考へ度くない樣子です...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...怨むこともあるまいと思うが」この半年の間...
久生十蘭 「重吉漂流紀聞」
...今更誰を怨むべきようもないと罵って...
穂積陳重 「法窓夜話」
...山内杉雄や久子を怨むようになつた...
三好十郎 「肌の匂い」
...私たちを怨む氣になるのも...
三好十郎 「肌の匂い」
...それは我身の運命を怨むのだとでも云おうか...
森鴎外 「雁」
...無軌道判決を怨む者は...
山下博章 「「プラーゲ旋風」の話」
...すべて彼の「私なき心」には怨む声もなく...
吉川英治 「三国志」
...「……あんまりです……」怨めば怨むほどもの狂わしく恋しいのだ...
吉川英治 「宮本武蔵」
...将軍家を怨むよりは...
吉川英治 「柳生月影抄」
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