...ところがメキネズは思いがけずブエーノスアイレスから遠くへ出かけねばならなくなりコルドバへきたのでした...
アミーチス 日本童話研究会訳 「母を尋ねて三千里」
...思いがけず海北友松(かいほうゆうしょう)の特別展覧会が開かれても居る...
岩本素白 「雨の宿」
...中泉さんのアトリエにかよっている研究生たちと一緒に、二、三日箱根で遊んで、その間に、ちょっと気にいった絵が出来ましたので、まず、あなたに見ていただきたくて、いさんであなたのお家へまいりましたのに、思いがけず、さんざんな目に逢いました...
太宰治 「水仙」
...ところが思いがけず最近になって妙な援兵(えんぺい)が現れた...
中谷宇吉郎 「雪雑記」
...源平屋島の戦いに、御座船(ござぶね)をはじめ、兵船もその他も海に沈みはてたとき、やんごとなき御女性に仕えていた蝴蝶という若い女も、一たん海の底に沈んだが、思いがけず、なぎさに打上げられた...
長谷川時雨 「田沢稲船」
...以前はなるほど私も民政党でありました、親父がそうであったからです、選挙などの時分には私も相当民政党のためには働きました、尽せるだけは尽して居りますよ、どちらかというと私も政治気違いであったし、党のためにも少なからぬ私財も投じて来ました、ところが、私が十四五年前にこの事業を思い立った時にも、民政党の人達は一向援助してくれる風もなく、口では親切そうに云いながら、実際の助力は誰一人してくれなかった、私は独力でこの事業を守らねばならなかった、苦心の甲斐もなく、その後、私がこの事業に失敗を重ねた時にも、ただの一人も声をかけてくれる者もなかった、それでも選挙などには随分政党のために尽したものです、トラックが抵当に何度もなった時にでも、民政党の人達は誰一人金を貸してくれる人もなかった、それでも、私はこの五月の選挙には、友田さんから、村の票や、漁業組合の票を買収してくれるように頼まれた時にも、随分と危ない橋を渡って買収や訪問をして歩いたものです、町の方に出て来れば私を馬鹿扱いにし、屑のように皆云いますが、これでも田舎に帰れば、小森さんと云って少々は人が立ててくれます、何度も巡査(おまわり)さんに捕まえられ、訊問(じんもん)されましたが、その都度うまく云い逃れました、友田さんのためにきわどい芸当も随分とやったものです、大方臭い飯を食うところだったのです、その後、選挙がすんで間もなく、又トラックが無尽会社からの借金のため抵当に取られたので、友田さんのところに頼みに行きました、ところが、一向受附けてくれず、けんもほろろで、五度も六度も足を運びましたが、結局無駄で、しまいには玄関払いをされました、私は途方に暮れ、帰る途中、以前から知り合であった赤瀬さんのところに寄って、保険料の延滞(えんたい)について色々お聞きし、期間のきれた私の保険を復活して貰うように手続を頼み、何気なしに、トラックのことを話したのです、赤瀬さんはお留守でしたが、奥さんが非常に同情して下さって、思いがけず、お金を融通して下さったのです、その後も色々と世話になり、赤瀬さんは全く私の事業にとっては大恩人なのです、一体この町で、政友会とか民政党とか云っても、誰も、その党の政党の政策がどうのこうのということは知りもせず、聞いてもわからない人が多いのです、それにもかかわらず、その政党に属して居るということは、自分の生活や商売にとって利益があればこそ、入っているだけのことです、私は政友会の政策がどんなものか、民政党がどんなものか、なんにも知らない、市会議員に出て居る人達だって本当に知っているものはあんまりないと思う...
火野葦平 「糞尿譚」
...すると彼女は思いがけず...
堀辰雄 「風立ちぬ」
...思いがけず田部(たなべ)重治さんが来ていられた...
堀辰雄 「雉子日記」
...思いがけずそのとき妻の存在が一瞬まざまざと全身で感ぜられたものだから...
堀辰雄 「菜穂子」
...彼女は夫に対する日頃の憤懣(ふんまん)が思いがけずよみ返って来るのを覚えた...
堀辰雄 「菜穂子」
...その御方が……」お前はそう私に思いがけず強く出られると...
堀辰雄 「楡の家」
...思いがけず道綱が殿の久しく絶えていた御消息を私のところに持って来た...
堀辰雄 「ほととぎす」
...思いがけずてっちゃんがやって来てね...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...多賀ちゃんのお心入れのまがいカステラで思いがけずテッちゃんにもお裾分けしました...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...ことしは思いがけず「春のある冬」の続篇が刊行されました...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...思いがけず生じた源氏との関係から...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...このひと言に思いがけず紀久子の心が反撥した...
矢田津世子 「父」
...僕のすぐうしろに思いがけず舅どのが立っていて...
レスコーフ Nikolai Semyonovich Leskov 神西清訳 「真珠の首飾り」
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