...「怪しいって、どんなことなのだね、怖がり屋が、己(じぶん)の影法師なんかを見て、なにか云うのだろう」「そんなこともありましょうが、なにしろ変なことがありますから、何人も入れないことにしてありますよ」「俺達が好いなら、かまわないだろう、そこへ入れて貰(も)らおうか」「お客さんさえ宜(よろ)しければ、私の方はかまわないですが、また変なことでもありますと、お気の毒ですから」「好いよ、妻室(かない)や小供はここへ置いといて、この男と二人で男同志が寝るさ」クラネクはベルセネフに向って、「二人で一ぱいやりながら寝ようじゃないか」「それが宜しゅうございますね、なに大したことはないでしょう」「お客さんがたってとおっしゃるなら、お入りになってもよろしゅうございますが、変なことがありましても、私の家では責任を負いませんよ」クラネクは細君(さいくん)と小供をその室(へや)に残しておいて、ベルセネフといっしょに主翁(ていしゅ)に跟(つ)いて往った...
田中貢太郎 「警察署長」
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