...佛は説きぬ娑羅双樹祇園精舍の鐘のねもその曉に綻びし別れの袖をいかにせむ更けてくるしむ待宵の涙なみだに數添てさても浮世の戀ぞ憂きさても我世の戀ぞ濃き...
土井晩翠 「天地有情」
...そのめざましい鬱金(うこん)はあの待宵(まつよい)の花の色...
中勘助 「折紙」
...またあるときは妹や乳母もいつしよに待宵の咲いてる原へ海苔まきをもつていつて食べたこともあつた...
中勘助 「銀の匙」
...そのめざましい鬱金(うこん)はあの待宵(まつよい)の花の色...
中勘助 「小品四つ」
...月の光に暗い勾欄(こうらん)の奥からは緋(ひ)の袴をした待宵(まつよい)の小侍従(こじじゅう)が現われ...
中里介山 「大菩薩峠」
...氷塊一片昨秋予の西遊を思ひ立つや、岡本倶伎羅氏を神戸の寓居に叩かんと約す、予が未發程せざるに先だち、氏は養痾の爲め、播磨の家島に移りぬ、予又旅中家島を訪ふを果さずして歸る、近頃島中の生活養痾にかなへるを報じ、且つ短歌數首を寄せらる、心爲に動き即愚詠八首を以て之に答ふ(其六首を録す)津の國のはたてもよぎて往きし時播磨の海に君を追ひがてき淡路のや松尾が崎もふみ見ねば飾磨の海の家島も見ず飾磨の海よろふ群島つゝみある人にはよけむ君が家島冬の田に落穗を求め鴛鴦の來て遊ぶちふ家島なづかし家島はあやにこほしもわが郷は梢の鵙も人の獲るさとことしゆきて二たびゆかむ播磨路や家島見むはいつの日にあらむ女あり幼にして母を失ひ外戚の老婦の家に生長せり、生れて十七、丹脣常に微笑を湛へて嘗て憂を知らざるに似たり、之を見るに一種の感なき能はず乃ち爲に短編一首を賦す母があらば、裁て着すべき、鬼怒川の待宵草、庭ならば垣がもと、雜草(あらくさ)も交へずあらんを、淺川や礫がなかに、葉も花も見るに淋しゑ、眞少女よ笑みかたまけて、虚心たぬしくあらめと、母なしに汝が淋しゑ、見る心から...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...待宵(まつよひ)には情人が何と聞くらむ...
森鴎外 「柵草紙の山房論文」
...待宵舟(まつよいぶね)一旗のような...
吉川英治 「宮本武蔵」
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