...少年の顔に往来する失望や当惑に満ちた表情...
芥川龍之介 「浅草公園」
...蓆(むしろ)旗――神経を尖らして往来する同志達――俺達は各々部署についていた一人残らず俺達はみんな云っていた...
今村恒夫 「死ぬる迄土地を守るのだ」
...それから後は公々然と音信し往来するを許された...
内田魯庵 「四十年前」
...足音をたてずに忙しく往来する女中達の白足袋などが鮮(あざや)かに動いてゐたりして面白かつた...
田畑修一郎 「鳥羽家の子供」
...凡兆は中音域を往来するセロ...
寺田寅彦 「連句雑俎」
...ただある免許を得てある期限に近国を往来するは...
徳富蘇峰 「将来の日本」
...まれに山木に往来する時もなるべく危うきに近よらざる方針を執りけるに...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...幾百里西なる人の面影(おもかげ)は日夕(にっせき)心に往来するに引きかえて...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...そこらここらに往来する兵隊も見た...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...今日(こんにち)まで吾々が年久しく見馴れて来た品川の海は僅(わづか)に房州通(ぼうしうがよひ)の蒸汽船と円(まる)ツこい達磨船(だるません)を曳動(ひきうごか)す曳船の往来する外(ほか)...
永井荷風 「水 附渡船」
...眼前を往来するこの黒い人間を眺めていた...
夏目漱石 「満韓ところどころ」
...その下を往来するハイカラな貴公子たちに心ちのいい樹蔭をつくっていたこともあったのだそうだけれど...
堀辰雄 「大和路・信濃路」
...哀悼(あいとう)の弔問客(ちょうもんきゃく)が絶えず往来する...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「悪の帝王」
...人間の往来するあちらでは数年来のさんざんな労苦があったが...
本庄陸男 「石狩川」
...東蝦夷地のシリベシ嶽は高山にして其絶頂に径り四五十町の湖水ありその湖の汀は皆泥なりその泥に羊の足跡ひしとありといふ奥地のシリベシ山を日本紀(斉明五年)に後方羊蹄(シリベシ)とかゝれたると此蝦夷の山と同名にして其文の如く羊の住めるはいと怪しと蝦夷へ往来する人語りし誠に羊蹄二字を日本紀にも万葉にもシの仮字に用ゐしは故ある事ならん...
牧野富太郎 「植物記」
...特殊的な対象の間を往来する反省は抽象作用に導き...
三木清 「哲学入門」
...夜の姿のままで往来するのも趣のあることであったが...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...しだいに明るくなってくる両側の燈影が、往来する旅客や、馬や、客を求める宿の女たちの、やかましく叫んだり走ったりする姿を、いかにも宿場の夕暮らしく、もの侘(わび)しげにうつし出していた...
山本周五郎 「風流太平記」
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