...あの人は弱虫で、とても勇気がない...
...弱虫だから、そんな危ないことはできない...
...大人になっても、弱虫のままだった...
...彼女は弱虫ではなく、いつでも自分の言葉を貫く強さがある...
...弱虫をバカにする言葉は使わないように...
...ふられ男の弱虫は...
泉鏡花 「薄紅梅」
...この弱虫め!」「僕はいままで探偵してきたことを続けてゆく方がいいと思うんだ」「なんのかんのというが...
海野十三 「地中魔」
...「厭(いや)だい」「それじゃ、天へほりあげてやろうか」「厭だい」「そんな弱いことで、どうする、男は何時(いつ)でも、腹を切らなくちゃならんが、汝(おまえ)は腹が切れるか」「厭だい」「厭だ、怕(こわ)いのか」「怕くなくっても、厭だい」「怕くないのに厭だと云う奴があるか、弱虫、しっかりしろ」「しっかりしてるのだい」「しっかりするものか、しっかりしてないよ、ほんとにしっかりしないと、たいへんだぞ、お父さんは人が好いから、どんなことになるかもわからんぞ、汝(おまえ)になにを云ってもわかるまいが、ほんとにしっかりせんと、鮫洲(さめず)の大尽(だいじん)の山田も、屋根へぺんぺん草が生えるぞ、しっかりしろよ、しっかり」「しっかりするのだい」「そうかしっかりするか、しっかりせんといかんぞ、お父さんは人が好いから、どんなことになるかも判らんぞ、しっかりしろよ、汝はまだ何も判らんが、困った奴を背負いこんだものだ、畜生、弟にまでふざける奴だ、兄貴が可哀そうだ」「あにきって何人(だれ)だい」「何人でもいいから、しっかりしろよ、汝がしっかりしてくれんと、ぺんぺん草だぞ」「ぺんぺん草って、なんだい」「ぺんぺん草は、草だよ、家が潰(つぶ)れて、貧乏になると、ぺんぺん草が生えるのだよ」「自家(うち)は、富豪(かねもち)だい」「さあ、その富豪が、しっかりしないと潰れるのだ、家が潰れないようにするには、皆が人の道を守って、子は親に孝行するし、兄弟は仲好くするし、女房は女房で、所天(ていしゅ)を大事にしなくちゃならん、その女房が所天を痴(ばか)にして、品行(みもち)の悪いことをしよると、家が潰れるのだ」「女房ってなんだい」「お媽(かみ)さんのことだよ」「おかみさん、それじゃ自家(うち)のお母(っか)さんも、女房かい」「そうだよ」「それじゃ、自家(うち)のお母さんが、自家を潰(つぶ)すのかい」「お母さんが潰しはしないさ、これは物の譬(たとえ)だよ、しかし、お母さんだって、悪いことをすりゃあ、自家が潰れるのだよ」「そう」「そうさ、だから、お母さんもお父さんを大切にして、痴(ばか)にしちゃならんよ」「うん」「判ったか」「判ったのだい」「よく覚えとれ」「うん」媚(こ)びるような艶(なまめ)かしい声がした...
田中貢太郎 「春心」
...それに私みたいな弱虫はひとりもゐないのでわがもの顔にわいわい騒いでゐる...
中勘助 「銀の匙」
...弱虫(よはむし)だつて...
夏目漱石 「それから」
...たった十五でその上念入りの弱虫だ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...三五郎は居るか、一寸來くれ大急ぎだと、文次といふ元結よりの呼ぶに、何の用意もなくおいしよ、よし來たと身がるに敷居を飛こゆる時、此二タ股野郎覺悟をしろ、横町の面よごしめ唯は置かぬ、誰れだと思ふ長吉だ生ふざけた眞似をして後悔するなと頬骨一撃、あつと魂消て逃入る襟がみを、つかんで引出す横町の一むれ、それ三五郎をたゝき殺せ、正太を引出してやつて仕舞へ、弱虫にげるな、團子屋の頓馬も唯は置ぬと潮のやうに沸かへる騷ぎ、筆屋が軒の掛提燈は苦もなくたゝき落されて、釣りらんぷ危なし店先の喧嘩なりませぬと女房が喚きも聞かばこそ、人數は大凡十四五人、ねぢ鉢卷に大萬燈ふりたてゝ、當るがまゝの亂暴狼藉、土足に踏み込む傍若無人、目ざす敵の正太が見えねば、何處へ隱くした、何處へ逃げた、さあ言はぬか、言はぬか、言はさずに置く物かと三五郎を取こめて撃つやら蹴るやら、美登利くやしく止める人を掻きのけて、これお前がたは三ちやんに何の咎がある、正太さんと喧嘩がしたくば正太さんとしたが宜い、逃げもせねば隱くしもしない、正太さんは居ぬでは無いか、此處は私が遊び處、お前がたに指でもさゝしはせぬ、ゑゝ憎くらしい長吉め、三ちやんを何故ぶつ、あれ又引たほした、意趣があらば私をお撃ち、相手には私がなる、伯母さん止めずに下されと身もだへして罵れば、何を女郎(ぢよらう)め頬桁たゝく、姉の跡つぎの乞食め、手前の相手にはこれが相應だと多人數(おほく)のうしろより長吉、泥草鞋(ざうり)つかんで投つければ、ねらひ違はず美登利が額際にむさき物したゝか、血相かへて立あがるを、怪我でもしてはと抱きとむる女房、ざまを見ろ、此方には龍華寺の藤本がついて居るぞ、仕かへしには何時でも來い、薄馬鹿野郎め、弱虫め、腰ぬけの活地(いくぢ)なしめ、歸りには待伏せする、横町の闇に氣をつけろと三五郎を土間に投出せば、折から靴音たれやらが交番への注進今ぞしる、それと長吉聲をかくれば丑松文次その余の十餘人、方角をかへてばら/\と逃足はやく、拔け裏の露路にかゞむも有るベし、口惜しいくやしい口惜しい口惜しい、長吉め文次め丑松め、なぜ己れを殺さぬ、殺さぬか、己れも三五郎だ唯死ぬものか、幽異(いうれい)になつても取殺すぞ、覺えて居ろ長吉めと湯玉のやうな涙はら/\、はては大聲にわつと泣き出す、身内や痛からん筒袖の處々引さかれて背中も腰も砂まぶれ、止めるにも止めかねて勢ひの悽まじさに唯おど/\と氣を呑まれし、筆やの女房走り寄りて抱きおこし、背中をなで砂を拂ひ、堪忍をし、堪忍をし、何と思つても先方は大勢、此方は皆よわい者ばかり、大人でさへ手が出しかねたに叶はぬは知れて居る、夫れでも怪我のないは仕合、此上は途中の待ぶせが危ない、幸ひの巡査(おまはり)さまに家まで見て頂かば我々も安心、此通りの子細で御座ります故と筋をあら/\折からの巡査に語れば、職掌がらいざ送らんと手を取らるゝに、いゑ/\送つて下さらずとも歸ります、一人で歸りますと小さく成るに、こりや怕い事は無い、其方の家まで送る分の事、心配するなと微笑を含んで頭(つむり)を撫でらるゝに彌々ちゞみて、喧嘩をしたと言ふと親父(とつ)さんに叱かられます、頭(かしら)の家は大屋さんで御座りますからとて凋(しを)れるをすかして、さらば門口まで送つて遣る、叱からるゝやうの事は爲ぬわとて連れらるゝに四隣(あたり)の人胸を撫でゝはるかに見送れば、何とかしけん横町の角にて巡査の手をば振はなして一目散に逃げぬ...
樋口一葉 「たけくらべ」
...學校(がくかう)にての出來(でき)ぶりといひ身分(みぶん)がらの卑(いや)しからぬにつけても然(さ)る弱虫(よわむし)とは知(し)る物(もの)なく...
樋口一葉 「たけくらべ」
...そういう弱虫の自分に対して自分自身で腹を立ててでもいるかのように...
堀辰雄 「あいびき」
...でもそんなことをすれば弱虫と見られる...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「煉獄」
...お勤めを休んでるやうな弱虫ぢや...
槇本楠郎 「母子ホームの子供たち」
...寂しがりの弱虫だから...
水上滝太郎 「大阪の宿」
...こんなバカの弱虫が...
三好十郎 「胎内」
...私は偉くなく、不完全で弱虫で、宗教的信念ももたず、将来とても、だいたいそうだろうと思います...
三好十郎 「抵抗のよりどころ」
...ただ弱虫の青年に共通な人生煩悶みたいなもの――藤村ミサオ流のものとチットも變らない甘つちよろい感傷があつただけなんだ...
三好十郎 「肌の匂い」
...こんなに弱虫(よわむし)じゃないんだ...
セルマ・ラーゲルレーヴ Selma Lagerlof 矢崎源九郎訳 「ニールスのふしぎな旅」
...それまで弱虫と見られていて...
夢野久作 「死後の恋」
...運(うん)のわるい弱虫の忍剣め...
吉川英治 「神州天馬侠」
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