...それが始の中は餘程粘り氣のあるものゝやうに、ゆつくり動いて居りましたが、だん/\滑らかに辷り始めて、やがてちら/\光りながら、鼻の先まで流れ着いたのを眺めますと、弟子は思はず、息を引いて、「蛇が――蛇が...
芥川龍之介 「地獄變」
...夫婦して小さな躄車(いざりぐるま)のようなものに病人らしい老母を載せて引いて行く...
寺田寅彦 「震災日記より」
...そうして花を引いても気の興(はず)むということがなかった...
徳田秋声 「足迹」
...花を引いてあるく裏面には...
徳田秋声 「爛」
...庭へ来て交るむ雀のあわたゞしさや手近い墓地に鳴き交わす雀共の賑わしさの中に藪鶯が美しい音尻を引いては鳴くのである...
富田木歩 「小さな旅」
...静かに足を引いて身構えにかかった...
直木三十五 「南国太平記」
...遠く上(かみ)手から本流の水を引いて来るのに...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...一足後へ引いて草鞋(わらじ)の踵(かかと)を向け直した...
夏目漱石 「坑夫」
...自分でその仕掛の綱を引いて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...着物は裾(すそ)のながいを引いて...
樋口一葉 「ゆく雲」
...要するにこれは芸人仲間の紛糾(いざこざ)から根を引いての意趣晴しに過ぎないかも知れない...
牧逸馬 「助五郎余罪」
...私とは何んの血統も引いていない...
牧野富太郎 「牧野富太郎自叙伝」
...親鸞は信巻において『浄土論註』から次の文を引いている...
三木清 「親鸞」
...何かいうと八幡神などの名を引いて誓言する老人ありしを...
南方熊楠 「神社合祀に関する意見」
...私も内々気を引いてみましたけれどもお登和さんのお心には貴君の事をあんまり好ましいともお思いなさらんようです」大原「それはチト失望ですな...
村井弦斎 「食道楽」
...思いがけぬ原因が蔭の方から糸を引いている場合が毎(つね)に多い...
柳田国男 「木綿以前の事」
...綱を引いてパラシュートを開かせる――そして...
蘭郁二郎 「夢鬼」
...多い幹も枝も空洞になつてゐる樣なのゝ連つた下にかゞんでぼつ/\と枯れた大豆を引いてゐる人の姿は...
若山牧水 「樹木とその葉」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??