...井月が或る家の庭前に柿の落葉を拾つて埃をふき...
今井邦子 「伊那紀行」
...庭前の梅やあんずの枝葉が如何にも繁り過ぎてゐるのに氣が附いた...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...黄鶴楼の庭前に作った仮舞台(かりぶたい)と面して見物席に充(あ)てたのは二タ間(ま)続(つづ)きの大広間であって...
内田魯庵 「硯友社の勃興と道程」
...どうもすこし怪しいことがありますから」窈娘はその飲物を取って庭前(にわさき)に遊んでいる犬の前へ捨てた...
田中貢太郎 「虎媛」
...夕方まで庭前(にわさき)の楓(かえで)の青葉を吹きなびけていた西風がぴったりないで静かな晩であった...
田中貢太郎 「雀が森の怪異」
...夕飯の準備(したく)をしていると源吉がひょいと庭前へ来て立った...
田中貢太郎 「放生津物語」
...庭前に咲いた萩の花が美しいので...
田中貢太郎 「法華僧の怪異」
...庭前には籠が据えてあって...
田中貢太郎 「魔王物語」
...庭前では、道場を開放して四民の間に武術を奨励するかと見れば、奥の間ではしきりに三味線の三下(さんさが)り、それも、聞いていれば、今時のはやり唄、紺のぶっさき丸八(まるはち)かけて長州征伐おきのどくイヨ、ないしょ、ないしょもり(毛利)ももりじゃがあいつ(会津)もあいつかか(加賀)のいうこときけばよいイヨ、ないしょ、ないしょの調子で、荒らかに三味線をひっかき廻し、興がっている...
中里介山 「大菩薩峠」
...十四庭前では尚武の風を鼓吹し...
中里介山 「大菩薩峠」
...平気で庭前にならんでいる勇士を一通り見廻わした上...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...(九)青鞘の短刀で一刺我々の家の庭前は崖の上にあつて面積が随分大きい...
村山槐多 「殺人行者」
...庭前に涼炉(こんろ)を焚いて肉を烹(に)た...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...結局する所は庭前の池の金魚に...
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」
...寺か社でなければ庭前にこれを賞する風はなかったが...
柳田国男 「雪国の春」
...庭前の緑の葉を潜り流れている水の涼しさを眺めたとき...
横光利一 「旅愁」
...」云いたいことのおしむらがって来る庭前の涼しさだったのに...
横光利一 「旅愁」
...庭前の梧桐も、百合も、アカシヤも一様に同じいのちの懐しさに顫いてゐる...
吉田絃二郎 「沈黙の扉」
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