...広海氏は帽子を脱いで叮嚀にお辞儀をした...
薄田泣菫 「茶話」
...三斎老人はやはり、芸道の話をしきりにしかけて来るが、その和らかい言葉がふくむ鋭い機鋒は驚くばかりで、浜川旧代官は、邪智(じゃち)深さで随一、横山というのは、狡猾無比(こうかつむひ)、これに、広海屋、長崎屋の毒々しい下品な智慧(ちえ)を加えたら、なるほど、どのような悪事をも、天下の耳目をくらまして、押し切って行えるだろうと思われた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...平たくいえば、広海屋さんより、わしの方へ、そなたも肩入れはしてくれるであろうと、それはもう安心し切っているのだ」楽屋内をもはばからず、ひそひそと、こんなことをいい出す長崎屋の心の中は、今迄(まで)のゆきがかりで、広海屋とどこまでも同体せねばならず、また二人心を合わせた方が、望みを果すに便利だとは思うものの、この場合、何とかして、この先輩同業を乗り越してやりたい野心を捨てることも出来ぬ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...広海屋さん――」「いかにもそれに違いない...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「のう、雪之丞どの」と、広海屋が、「長崎屋から、くわしゅう聴いているらしいが、そなたが思いの儘(まま)に腕を振ってくれさえすれば、未来永劫(えいごう)、この二人で、そなたの一生のうしろ見は必ずして上げますぞ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...だが、ここに、さりとて、その言葉を、すぐにお受けするわけにならぬ義理もあるので――」と、広海屋は、考え込みながら、「そなたも知る、長崎屋、あれが、中々、目から鼻に抜ける儲(もう)け師、東の不作と見て、これからますます騰貴(とうき)すると見込みをつけ、今になって、買入れ、仕込みをいそいでいるのじゃ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...広海屋の顔いろが...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...わしが、上方で買いしめて置いた米を、東へ、のこらず一どきにまわすといい出すと、店の番頭手代どもも、持ちこらえておれば、高う売れるものをと、否やをいうものもあったが、押し切って、大荷を、船積みさせたほどに、もう二、三日で、品川の海から、米船が、ぞくぞくとはいって来るわけ――これで、江戸表の、天井知らずに騰(あが)っている米価が、ずうんと下るは必定――その上、施米(せまい)なぞもいたすつもりで、お上役向、名高い御寺の上人さまにも、御相談申しておれば、おかげで、広海屋の名は、天下にひびきますぞ――」「それは、また、思い切ったなされ方――江戸の人々はさぞよろこびましょうが、それにしても、大した御損を見るわけ――わたくしは、よけいなことを申し上げたような気がしてなりませぬ」雪之丞が懸念そうに、眉を寄せて見せると、相手は、かぶりを振って、「いやいや、もともと、上方、西国の田舎に手をまわし、貧しい百姓のふところの窮迫を見とおして、立毛(たちけ)のうちに、ごくやすく手に入れて置いた米、なんぼう安く売ろうと、儲(もう)けは十分、ことさら、一どに大金がはいるわけゆえ、その利分がまた格別じゃ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...琉球朱(りゅうきゅうしゅ)のしっぽく台に、料理がはこばれ、めぐる杯と一緒に、お座つきは、太鼓がはいって、「執着」のひとふし――それが、済むと、浮いた浮いたと、太鼓持が、結城つむぎのじんじんばしょり、甲斐絹のパッチの辷(すべ)りもよく、手ぶり足ぶみおもしろく、踊り抜いて、歓笑湧くがごときところへ、広海屋の馴染の、玉葉(たまば)太夫というのが、たいまいの笄(こうがい)、蒔絵(まきえ)の櫛(くし)も重そうに、孔雀(くじゃく)の尾のうちかけを羽織って、しずかに現れる...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...腹の中では、いつか雪之丞に打ち明けた通り、広海屋を、乗り越そう乗り越そうと計っているのではあったが――されば、呼びかけの名にしても――――広海屋さん――とか、――お前さま――とか、――こなた――とか、いうような言葉を使って、ついぞ、長崎屋の口から、――おぬし――なぞという、ぞんざいな言葉が洩れたことはなかったのである...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...さ、どうぞ、手を上げて下さい」「それなら、広海屋さん、わしの願いを聴き入れて――」「そなたと、わしの仲、そこまで申されるのを、押し切って否(いな)むのは、何とも心苦しいが、さっきにもいうとおり、上方米の、東まわしは、わしの一存のことではなく、実は、さる筋からの耳うちがあって、このまま、米の値を上げてゆくときは、世間が騒々しくなり、貧しい人達が、一揆(いっき)さわぎを起さぬとも限らぬ――広海屋、そちは、幸い、上方に持米多きよし、思い切って御奉公せよ――とのお言葉――わしも、辛いが、よんどころなしの仕事――長崎屋さんに、今度のことで、ほんの僅(わず)か損をかけようとも、又の日で、何かでうめ合せもいたしましょう...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...今にも傾きかけた広海屋の店を...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...二初冬ながらも、涸(か)れもせず、恒(つね)にかわらぬ、漫々たる夜の大川を、見渡す、料亭ろ半の門を潜って、今夜は、広海屋の一座は、顔をも姿をも見せぬ――と、いうことを、帳場からハッキリと聴いたとき、闇太郎は、今迄(まで)の胸さわぎを、まさかと抑えていたのが、現実となって、思わず、「やっぱし行(や)りゃあがったな!」と、呻(うめ)いて、奥歯を噛んでしまった...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...絶えず畏怖心(いふしん)から離れられぬ広海屋の主人は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...広海屋どのう! 浜川どのう! 横山どのう! 土部さまあ! 土部三斎さまあ! わしばかり...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...広海屋が焼けている最中...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...一身の文明を進めんと欲すれば先ず三度の食物を文明的に改良すべしとこういう順序になって来ますね」広海子爵「アハハ何でも食物へ引張り付ける...
村井弦斎 「食道楽」
...モー帰りそうなものですが近日広海さんのお家で食物研究会をお開きになるはずですからその御相談が始まったかもしれません...
村井弦斎 「食道楽」
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